13日、米南部テキサス州の打ち上げ施設に戻る大型宇宙船「スターシップ」のブースター(スペースXの中継映像)

【ヒューストン=花房良祐】米起業家イーロン・マスク氏が率いる宇宙会社スペースXは米国中部時間13日朝(日本時間同日夜)、米南部テキサス州ボカチカから史上最大のロケット「スターシップ」を打ち上げた。打ち上げ後に宇宙船から分離したロケットのブースター(推進装置)を陸上で回収することに成功した。

スターシップは高さ約120メートルの史上最大のロケットシステムで、大型ブースター「スーパーヘビー」と宇宙船で構成する。メタンなどを燃料とし、ブースターに33基、宇宙船に6基のエンジンを搭載、100〜150トンの貨物を運搬できる。

ブースターは宇宙船から分離した後、打ち上げから約7分後にテキサス州の打ち上げ施設に帰還。2本の棒状の設備「チョップスティック(箸)」を備えた発射台がブースターを箸のようにつまんで回収した。

米メディアによると、2本の腕を備えた巨大な発射台は、映画「ゴジラ」に登場するキャラクター「メカゴジラ」から着想を得て「メカジラ」とマスク氏に命名された。ロケットの再利用に道を開き、打ち上げコストの大幅な低下につなげる。

宇宙船は打ち上げから約1時間で地球を半周してインド洋に着水した。回収の予定はなく「軟着陸」して海に沈んだ。マスク氏は13日、X(旧ツイッター)に「宇宙船は目的地に正確に降り立った。2つ目の目標も達成された」と投稿した。

スターシップは2023年4月に初の打ち上げを実施し、今回は5回目の打ち上げ。空中での爆発もあったが、打ち上げを重ねるごとに前進してきた。スペースXは失敗してもすぐに改良して次に進むことでスピード開発をしてきた。

米航空宇宙局(NASA)は月面有人開発計画「アルテミス」でスターシップを26年にも月面着陸機として使う計画だ。マスク氏は将来的にはスターシップで火星を有人開発する構想を描く。

このほかにもスターシップで通信衛星サービス「スターリンク」の小型衛星を打ち上げ、数万機規模の衛星網を構築する予定。これまでは従来のロケットで1回につき数十機の小型衛星しか打ち上げられなかったが、スターシップで大量の打ち上げが可能となる。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。