今年のノーベル文学賞に韓国の作家ハン・ガンさんが選ばれた。韓国人としても、アジアの女性としても、初めての受賞となる。今春、ソウルでインタビューした記者が、その時の様子や人柄を振り返った。

  • 暴力に満ちた世界で、希望を想像する 問い続ける作家ハン・ガンさん

 「小説を読んだ人は私がまじめで気むずかしいと思うようですが、会うと思ったより明るくてよく笑うと驚かれます」

 4月30日、ソウルで取材したハン・ガンさんはそう言うと、はにかんだような笑顔を見せた。その言葉通りよく笑い、気さくな人柄だった。

 一方で受け答えでは時に考え込み、言葉を選びながら真摯(しんし)に話してくれた。ささやくように語る姿も印象的だった。

 ハンさんは1970年、韓国南西部の光州市に生まれた。肉食を拒否し、日に日にやせ細っていく女性を描いた「菜食主義者」で2016年にアジア初のブッカー国際賞を受賞し、世界的に注目された。この「菜食主義者」をはじめ、「ギリシャ語の時間」「回復する人間」「すべての、白いものたちの」など多くの作品が日本語に翻訳されており、日本での韓国文学人気を牽引(けんいん)してきた作家の一人だ。

 取材後、街中を一緒に歩きながら「ノーベル文学賞の候補にお名前が挙がっていますね?」と水を向けてみた。ハンさんからは「そうなんですか? 聞いたことがないです」という答えが返ってきた。飾らず、えらぶらない態度が記憶に残った。(瀋陽=金順姫)

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