【ニューヨーク=竹内弘文】4日のニューヨーク外国為替市場でドルが主要通貨に対して上昇し、対円では約1カ月半ぶりとなる1ドル=149円台までドル高・円安が進む場面があった。9月の米雇用統計で就業者数の伸びが市場予想を大幅に上回り、米連邦準備理事会(FRB)の利下げペースが鈍るとの見方がドル高を促す。
対ユーロでも一時1ユーロ=1.0951ドルと、8月半ば以来のドル高・ユーロ安水準を付けた。主要通貨に対するドルの強さを示す「ドル指数」は前週末対比で2.2ポイント高い水準まで上昇、週間の上昇幅としては約2年ぶりの大きさを記録した。
4日発表の雇用統計で非農業部門の就業者数は前月から25万4000人増えた。市場予想(14万〜15万人増)対比で上振れした。米ネット証券インタラクティブ・ブローカーズのシニアエコノミスト、ホセ・トーレス氏は「企業部門の採用意欲がなお強いことを示した」と指摘した。
これまで急ピッチの利下げが続くとみていた金融市場は、底堅い米経済を示唆する雇用統計の結果を受けて、見通し修正に動いている。
金利先物の値動きから市場が織り込む政策金利予想を算出する「フェドウオッチ」によると、2025年10月末の政策金利予想は「3.25〜3.5%」が最も有力だ。現状から計1.5%の利下げ実施を意味する。前週末9月27日時点で最も有力だったのは「2.75〜3%」予想だった。わずか1週間で予想累計利下げ幅が0.5%縮んだ。
急速なドル高・円安の進行は、ヘッジファンドなど投機筋の持ち高調整による面もある。米商品先物取引委員会(CFTC)によると、投機筋(非商業部門)の円の先物とオプションの買越額は9月24日時点で8年ぶりの高水準だった。FRBの利下げと日銀の利上げで日米の金利差縮小によるドル安・円高の進展を見込んだトレードが人気だった。
直近の経済指標を受けた米利下げペースの見通し変化が、トレードの手じまいを迫った。「利上げ論者だった石破茂首相が変節して日銀による早期利上げに否定的な見方を示した」(米オアンダのケルビン・ウォン氏)ことも、円売りを再開させる要因となった。
米株式市場で、ダウ工業株30種平均は反発して前日比341ドル(0.8%)高の4万2352ドルで引け、4日ぶりに史上最高値を更新した。前日までは中東情勢のさらなる緊迫化に向けた警戒感が相場の重荷となっていたが、好調な雇用統計を受けて米景気の底堅さが改めて確認され、投資家心理が好転した。業種別では金融や一般消費財など、景気敏感株の上昇が目立った。
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