フランスではこの夏行われた議会下院にあたる国民議会の選挙のあと、どの政党も過半数を得られず、およそ2か月にわたって後任の首相や閣僚が決まらない異例の事態が続いていました。
9月にようやく発足した右派・共和党などを中心とする新内閣で首相を務めるバルニエ氏は1日、国民議会で施政方針演説を行いました。
この中でバルニエ首相は、歳出の削減を通じた財政の再建や、不法入国者への対策としての国境管理の強化、それにウクライナへの支援の継続などの方針を表明しました。
ただ与党側の議席は過半数に届いておらず、法案の成立には野党の左派の連合や、極右政党の国民連合から支持を取り付けることが必要です。
バルニエ首相は「困難は承知している。共通の道を模索し、妥協点を見いだそう」と述べ、協調を呼びかけました。
しかし左派の連合は、早くも内閣不信任決議案を提出する構えをみせたほか、国民連合も今後、不信任決議案に賛成する可能性は排除しない姿勢を示しています。
極右政党と左派の双方から圧力を受ける中、政権は難しいかじ取りを強いられています。
専門家「極右政党が政権を左右 異例で奇妙」
フランス政治に詳しいパリ大学のバンジャマン・モレル准教授は、フランスの新内閣について「安定にはほど遠く、とても異例で奇妙な状況にある」と指摘しています。
具体的には、左派が提出を検討している内閣不信任決議案が、極右政党の国民連合の意向次第でいつでも可決されうる状況にあるとして「バルニエ首相がとりうる選択肢は、国民連合に屈するか、屈さずに政権が崩壊するかのどちらかだ」と述べ、首相は極右政党の意向を無視できない状況だと分析しています。
その上で「この状況は、国民連合にとってはみずからを利する夢のような戦略的環境だ」として、極右政党にとって、政権に対して圧力をかけ影響力を高める絶好の機会が到来していると指摘しました。
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