【詳細】ロシア・ウクライナに軍事侵攻(9月26日の動き)
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バイデン大統領 ウクライナに軍事支援の方針 総額1兆円超
アメリカのバイデン大統領は26日、アメリカを訪れているウクライナのゼレンスキー大統領とホワイトハウスで会談しました。
この中でバイデン大統領は「ロシアは戦争に勝てず、ウクライナが勝つ。われわれはウクライナ側に立ち続ける」と述べました。
そして、ウクライナが戦地で優位に立つことが、戦争の終結に不可欠だとして、新たな軍事支援を行う方針を伝えました。
ホワイトハウスによりますと、支援の総額はおよそ80億ドル、日本円にして1兆1000億円相当に上り、長距離攻撃能力の強化に向けて射程の長いミサイルの供与や、防空システム「パトリオット」の追加供与などを行うということです。
また、欧米などの各国が、ウクライナ支援を協議する首脳級の会合を10月ドイツで開くとしています。
会談で、ゼレンスキー大統領は、アメリカの支援に謝意を示した上で、戦争を終結させるためとして、ウクライナが作成している「勝利計画」について、「どのように計画を強化し、確実に実行していくのか、詳細を協議したい」と述べました。
さらに、ゼレンスキー大統領は、ハリス副大統領とも会談しました。
ハリス氏は「ウクライナの人々への支持は揺るぎないものだ」と述べ、ゼレンスキー大統領はハリス氏にも「勝利計画」の詳細を説明する考えを示しました。
「勝利計画」とは
ゼレンスキー大統領がバイデン大統領との会談で示したのが、戦争を終結させるためとしてあらたにまとめた計画で、「勝利計画」と名付けています。
ゼレンスキー大統領は8月下旬、首都キーウで開いた記者会見でバイデン大統領をはじめ、ハリス副大統領や共和党のトランプ前大統領に「勝利計画」を提示する考えを明らかにしました。
これまでの記者会見やインタビューで、計画は軍事や政治、外交、経済といった4つのテーマからなるとしています。
このうち軍事面では、欧米から供与された射程の長い兵器でロシア領内を攻撃できるようにすることや、8月始めたロシア西部クルスク州への越境攻撃も「計画の一部だ」としています。
また、イエルマク大統領府長官は、9月24日にウクライナが求めるNATO=北大西洋条約機構への加盟に向けて、NATOが正式な手続きを始めることも計画に含まれていると明らかにしました。
「勝利計画」について、ゼレンスキー大統領はアメリカのABCテレビのインタビューで「戦争を止める外交的手段への橋渡しだ。軍や国民を強くすることでウクライナの強い立場を築き、外交的手段でプーチン大統領に戦争をやめさせることができる」と説明しました。
ゼレンスキー大統領としては欧米各国から軍事的、外交的な支援を得てロシアに圧力をかけ、ウクライナにとって公平な形で戦争を終わらせたい考えで、今回のアメリカ訪問で最大の支援国から「勝利計画」への支持を得られるかが、焦点となります。
野党・共和党からは批判も
ロシアによる軍事侵攻に対抗するため、アメリカの支援強化を求めてきたウクライナのゼレンスキー大統領に対し、野党・共和党からは批判も出ています。
11月の大統領選挙で政権奪還を目指す共和党のトランプ前大統領は25日、ゼレンスキー大統領について「彼はわれわれの国に来るたびに600億ドルを手にして帰る。彼はおそらく地球上で最も優れたセールスマンだ」と述べました。
そして「建物は倒壊し、街は消えた。われわれは取り引きを拒否する男に数十億ドルも与え続けている」と述べロシアとの交渉に応じようとしないとして、ゼレンスキー大統領の対応を批判しました。
また、連邦議会の共和党議員からは、ゼレンスキー大統領が22日、ウクライナに供与される砲弾を製造している、東部ペンシルベニア州の工場を訪れたことにも反発が出ています。
ペンシルベニア州は、大統領選挙の勝敗を左右するとされる激戦州の1つで、共和党のジョンソン下院議長は25日、視察には共和党の議員が招待されなかったとして「民主党を後押しするための党派的な選挙運動で、選挙干渉であることは明らかだ」と批判しました。
そしてこの視察を調整したとして、アメリカに駐在するウクライナのマルカロワ大使を直ちに解任するよう求めました。
トランプ前大統領 ゼレンスキー大統領と会談の予定
アメリカのトランプ前大統領は26日、ニューヨークで記者会見し「ゼレンスキー大統領から会いたいという申し出があったので、会う予定だ」と述べ、27日にマンハッタン中心部にある「トランプタワー」で会談する予定があると明らかにしました。
トランプ氏は「私が大統領だったら、ロシアはウクライナを攻撃することはなかっただろう。私ならすぐにプーチン大統領とゼレンスキー大統領の間で交渉をまとめることができる」と述べ、自身が大統領選挙で勝利したら、和平を実現できると改めて主張しました。
さらに、トランプ氏はウクライナへの軍事支援をめぐり「非常にやっかいなことの1つは、ヨーロッパは、アメリカの支払っている金額のほんのわずかしか支払っていないことだ。平等であるべきだ」と述べ、ヨーロッパの国々も相当の負担をすべきだと強調しました。
ウクライナに日本政府が教科書100万冊余りを供与
ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナの教育現場を支援しようと、日本が100万冊あまりの教科書を供与することになり、このうち首都キーウ近郊の学校で26日、引き渡し式が行われました。
ウクライナの首都キーウ近郊のイルピンにある学校で行われた引き渡し式には、日本とウクライナの政府の関係者らが出席しました。
教科書の供与は、ウクライナ側の要請を受ける形で日本政府がJICA=国際協力機構を通じて行いました。
ウクライナ国内のおよそ1万校を対象に、日本の小学5年生にあたる学年の児童が使う外国文学などの教科書、100万冊あまりが供与されるということです。
式典でウクライナのリソビー教育科学相は、「2年前に国の予算が戦争に振り向けられ、教科書の予算が不足したとき、日本が最初に支援を名乗り出てくれた」と述べ、謝意を示しました。
オンラインで群馬の児童と交流も
この日は、日本語を学ぶ子どもたちと群馬県の小学校を結んでオンラインの交流会も行われ、子どもたちは日本語で、それぞれの街を紹介したり、お互いの夢などを話したりしていました。
交流会に参加した日本の中学1年生にあたる学年の12歳の女子生徒は、「緊張しましたがうまく話せました。日本語の発音や日本の文化が好きです。文字もとてもきれいです」と話していました。
また、ロシアによる軍事侵攻で、住んでいたアパートが攻撃されたという12歳の女子生徒は、「交流会はとても楽しく、日本の生徒はとても熱心でした。ウクライナが戦争に勝ち、日本に遊びに行きたいです」と話していました。
ウクライナに駐在する松田邦紀大使は、「若い世代はウクライナの将来の復興に重要な役割を果たす。日本はウクライナの復興と繁栄への道のりを支援する」と述べました。
児童や生徒からも支援への謝意が示され、このうち16歳の女子生徒は「将来は国際的な企業で働いて、ウクライナを復興させたい。いつか日本にも行きたい」と話していました。
ウクライナでは連日、防空警報が出ていますがこの学校では26日も警報が出たため、児童や生徒500人ほどが一時シェルターに避難するなど安心して学べる環境の確保も課題になっています。
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