ヒズボラとの停戦呼びかけに ネタニヤフ首相 “全力で攻撃”

イスラエル軍は26日、兵器の輸送に使われているとしてレバノンとシリアの国境地帯にあるヒズボラの拠点を空爆したほか、首都ベイルートへの空爆でヒズボラの幹部を殺害したと発表しました。

また、イスラエル北部のレバノンとの国境地帯では、地上作戦も想定した訓練を完了したと発表するなど、地上作戦への備えをアピールしています。

一方、ヒズボラもイスラエル北部の軍需企業に向けてロケット弾を発射したなどと発表し、攻撃の応酬が続いています。

イスラエル軍がレバノンへの地上作戦の可能性に言及する中、アメリカと日本、フランスなどは25日、共同声明で、イスラエルとレバノンの国境地帯での21日間の停戦を呼びかけています。

これに対し、国連総会に出席するため26日にニューヨークに到着したイスラエルのネタニヤフ首相は、翌日の演説を前にレバノンへの空爆について「われわれの政策は明確だ。全力でヒズボラを攻撃し続ける。われわれの目標をすべて達成するまで、何よりもイスラエル北部の住民が避難先から安全に自宅に戻れるようになるまでだ」と述べ、国際社会が停戦を呼びかける中でもあくまで継続する考えを示しました。

イスラエルとヒズボラの停戦 アラブ諸国が国連安保理に訴え

ニューヨークの国連本部では26日、アラブ諸国の首脳らと、国連安保理の理事国の国連大使らとの会合が開かれました。

このなかでイラクのフセイン外相はレバノン情勢について「戦争の継続はこの地域に混乱と大惨事を引き起こすと国連に警告したい」と訴えました。

また、サウジアラビアのファイサル外相は「私が問いたいのは、安保理が流血を終わらせる措置を取れるかどうかだ」と述べ、停戦に向けた実効性ある措置を求めました。

これに対し、アメリカのトーマスグリーンフィールド国連大使は「今週、多くの国の指導者がガザ地区について語り、罪のない民間人の苦しみを終わらせることができない国連と安保理に対して、率直で強い批判を展開した。私は彼らのいらだち理解し共有する」と述べて、安保理への不満を受け止めていました。

また、今月の安保理議長国スロベニアのファヨン外相は「安保理が持つ力を使うことは私たちの共同責任だ」と述べ、安保理として一致した対応をとれるよう取り組む考えを強調しました。

アラブ連盟事務局長 “イスラエル側がまず攻撃をやめるべき”

アメリカなどが呼びかけているイスラエル軍とヒズボラとの停戦について、レバノンを含むアラブの国や地域で作る「アラブ連盟」のアブルゲイト事務局長は、26日、ニューヨークの国連本部で開いた会見で「イスラエル側が攻撃を仕掛けているのだから、停戦を呼びかけられているのはイスラエルのほうだ」と述べ、停戦を実現するにはイスラエル側がまず攻撃をやめるべきだとする考えを強調しました。

米 オースティン国防長官 “全面的な戦争のリスクに直面”

アメリカのオースティン国防長官は26日、訪問先のイギリスでの記者会見で「イスラエルとレバノンの双方にとって壊滅的な結果をもたらすであろう全面的な戦争のリスクにわれわれは直面している」と述べ、危機感を示しました。

そのうえで「軍事的ではなく、外交的な解決だけが、国境そばで避難を強いられている双方の人たちが自宅に戻ることができる唯一の方法だ」として、改めてイスラエルとレバノンの国境地帯での21日間の停戦が必要だと訴えました。

また、記者から「イスラエルがヒズボラとの戦闘に関してアメリカの呼びかけに耳を傾ける確信はあるか」と問われ、オースティン長官は「われわれの外交官が停戦を実現できるよう模索し続けていると信じている。ただ、懸命に取り組まなければならないことがあると認識している」と述べました。

パレスチナ アッバス議長が国連総会で演説 停戦に尽力呼びかけ

パレスチナ暫定自治政府のアッバス議長は26日、国連総会の一般討論演説で、ガザ地区で去年10月に始まったイスラエルとハマスの戦闘で4万人以上の死者が出ている現状について「人々は1年近くもの間、イスラエルによる戦争犯罪と虐殺にさらされている。イスラエルはガザをほぼ完全に破壊し、人の住めない場所に変えた」と述べ、激しく非難しました。

また、イスラエルに軍事支援を続けるアメリカに対しても「罪のない何千もの子どもや女性、高齢者を殺害するための武器を提供し、軍事作戦の継続を後押ししてきた」と述べ、これまでの対応を批判しました。

その上で、国際社会に対し「イスラエルが行ってきた虐殺などが、何の責任も取らずに済まされてはいけない」として、イスラエルに制裁を科すことを求めるとともに、ガザ地区からイスラエルを完全に撤退させ、恒久的な停戦の実現に向けて力を尽くすよう呼びかけました。

これに対し、イスラエルのダノン国連大使は声明で「アッバス議長は演説でハマスという言葉を一度も言わず、去年10月以降、ハマスの犯罪行為を非難していない」と反発しました。

国連総会開催のNYでイスラエルに抗議する大規模なデモ

国連総会の一般討論演説などに出席するため各国の首脳らが集まっている、ニューヨーク・マンハッタンの国連本部の周辺は、人や車両の行き来が制限され、厳重な警備態勢が敷かれています。

こうしたなか、イスラエルに抗議するデモが、当初ネタニヤフ首相が一般討論演説を行う予定だった26日に、複数の市民団体が呼びかけて行われ、参加者たちはパレスチナやレバノンの旗を振りながら怒りの声を上げていました。

そのうえでネタニヤフ首相に対して「あなたは歓迎されていない」などと声をあわせて訴え、ICC=国際刑事裁判所の主任検察官から戦争犯罪や人道に対する犯罪の疑いで逮捕状が請求されていることを受け、国連総会への出席にあわせて身柄を拘束するよう求めていました。

一連のデモでは、非難の矛先はイスラエルの同盟国として支援を続けるアメリカのバイデン政権や、攻撃を一向に止めることのできない各国のリーダーたちに対しても向けられていました。

仲間とともに抗議デモを呼びかけたという男性は「ネタニヤフ首相はレバノンに戦線を広げ、虐殺を拡大しようとしています。逮捕されるべきだと訴えるために集まったのです」と話していました。

両親がホロコーストを経験したユダヤ人だという女性は「ユダヤ人として正義のために立ち上がる義務があります。今のこの状況を止めなければなりません」と話していました。

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