会談を前に韓国の尹錫悦大統領㊨と握手する岸田首相(6日、ソウルの大統領府)=共同

【ソウル=広沢まゆみ】岸田文雄首相は6日、訪問先のソウルで韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領と1時間40分ほど会談した。第三国で緊急事態が起きた場合にお互いに両国民の退避で協力することを確認した。朝鮮半島の平和と安定について意見交換した。

会談に合わせて両国の外交当局が退避に関する覚書を交わした。日本が邦人退避の協力を巡る覚書を他国と結ぶのは初めて。チャーター機の相互利用などを想定し、平時から領事当局間が情報共有する。

首相退任前の訪問は両国首脳が相互に訪問し合う「シャトル外交」の一環だ。首相は「日本の次の首相が誰になろうと日韓関係の重要性は変わらない」との考えを示した。

両国の入国手続きの円滑化に向けて具体的な検討の開始を申し合わせた。入国審査を事前に済ませるプレクリアランス(事前審査)の導入を念頭に置く。

首相は会談後、記者団に「両国の信頼の高まりを示すものだ」と強調した。「2025年の国交正常化60周年を契機として日韓の協力と交流を持続的に強化する方針を確認した」と明かした。24年の両国の往来は過去最多の1000万人を超える見通しだ。

会談ではロシアと北朝鮮の関係が事実上の軍事同盟にまで進んだ深刻な情勢について話し合った。引き続き日韓や日米韓で緊密に連携する方針を確かめた。

中国の海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル開発で、東アジアの安保環境は悪化し、台湾有事への危機感も高まっている。北朝鮮の核開発の強化に対する懸念を共有した。拉致問題について尹氏から即時解決に向けて改めて支持する旨の発言があった。

首相の在任中に日韓関係は改善した。元徴用工問題などによる関係悪化により2011年以来途絶えていたシャトル外交を23年に再開した。首相と尹氏の両首脳が対面で会談するのは12回目で、シャトル外交としての韓国訪問は23年5月以来になる。

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