フォルクスワーゲンはドイツ北部ウォルフスブルクの本社で従業員に経営方針を伝える会議を開きました。
このなかで会社側は、ヨーロッパの自動車市場は新型コロナの感染拡大前の規模に戻っておらず、工場2か所分に相当する50万台の売り上げが不足している状況だとして、工場の閉鎖を検討していることを従業員に説明したということです。
ヨーロッパ市場では中国メーカーが低価格のEVで攻勢をかけており、会社はコスト削減が必要だとして、国内の工場の閉鎖を排除せず、6つの工場で働く従業員の雇用を保証する労働組合との協定を打ち切る方針も、9月2日に示していました。
フォルクスワーゲンがドイツ国内の工場を閉鎖すれば1937年の会社の創業以来初めてとなります。
従業員は激しく反発していて、代表は会議後、記者団に対して、工場の閉鎖や雇用を保証する協定の破棄は受け入れられないと拒否する姿勢を示しました。
フォルクスワーゲンはドイツ最大手の自動車メーカーで、大規模なリストラの検討を発表したことで、景気への影響も懸念されています。
フォルクスワーゲンの本社で開かれた会議には、およそ2万5000人の従業員が参加し、警笛を一斉に鳴らしたりして抗議の意志を示していました。
また、会議では経営陣が説明を始められないほど激しいブーイングも起きたということです。
会議終了後に記者団の取材に応じた従業員代表のダニエラ・カバロ氏は、「経営陣は会議で『フォルクスワーゲンファミリー』と何度も口にしたが、危機の時は誰も見捨ててはならないはずだ」と述べ、経営陣を強く批判しました
ヨーロッパでEVの需要が落ち込む
ヨーロッパ自動車工業会によりますと、EU=ヨーロッパ連合の域内のことし1月から7月までの新車の販売台数は653万台余りと、去年の同じ時期と比べて3.9%の増加となっています。ハイブリッド車の売れ行きが好調だったことが要因です。
一方で、1月から7月までのEVの販売台数は81万台余りとなり、去年の同じ時期と比べて0.4%減っています。
EVの内訳を国別で見ると、販売台数が比較的多いフランスやオランダなどでは増えていますが、台数が最大のドイツではおよそ20%減少しています。ドイツ政府が去年12月にEVを購入する際の補助金を打ち切ったことが販売減少につながっています。
こうしたなか、中国の自動車メーカーはヨーロッパの市場に向けてEVの輸出を強化しています。
中国で過剰に生産された価格の安いEVが持ち込まれる「デフレ輸出」への警戒感がヨーロッパで高まり、EU=ヨーロッパ連合は、ヨーロッパの企業に損害を与えるおそれがあるとして、ことし7月から中国からのEVに対して暫定的な追加関税を発動していました。
フォルクスワーゲン EVシフトを強化も苦戦強いられる
フォルクスワーゲンは、2015年にディーゼル車の排ガスをめぐる不正が発覚して以降、売り上げの減少を挽回するため、EVシフトを強化してきました。
3年前には、2030年までにヨーロッパで販売する車の少なくとも7割をEVにする計画を発表し、経営戦略の中心に据える姿勢を鮮明にしました。
しかし、中国のEVメーカーが世界での販売台数を伸ばす中で、ヨーロッパ最大の自動車市場であるドイツにも中国勢が攻勢をかけるなど、EV市場での競争は激化しています。
ことし1月から6月までのフォルクスワーゲンのグループ全体の世界のEVの販売台数は31万7200台と、去年の同じ時期と比べて1.4%減少しました。
このうち、おひざ元であるヨーロッパ市場では、1月から6月までで去年の同じ時期と比べて15.2%も減少しています。
また、ガソリン車などすべてのタイプを含めた販売台数で見ると、景気が減速する中国市場でも販売が落ち込み、苦戦を強いられています。
このほか、人件費の増加なども経営課題となっていて、ことし1月から6月までの決算で最終利益は前の年の同じ時期と比べておよそ14%減少したことから、会社側はことし8月「厳しい市場環境を乗り切るためにはコストをさらに削減する必要がある」とコメントしていました。
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