【ニューヨーク=西邨紘子】米製薬モデルナは11日、ケニアでのメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン工場の新設計画を保留すると発表した。アフリカ地域向けの供給拠点として2022年に建設を決めたが、その後新型コロナウイルスワクチンの需要が急減。早急な需要回復が見込めないとして工場建設を遅延し、新薬開発などに投資資金を振り向ける。
モデルナは22年3月、工場の建設に最大5億ドル(約760億円)を投じ、年間最大5億回分のワクチンを生産する投資計画でケニア政府と覚書を交わしていた。
計画保留の理由について「22年以降にアフリカ地域から新型コロナワクチンの注文を受けておらず、工場新設を進める需要環境がない」(同社)と説明した。アフリカ地域でのワクチン需要低迷と購入計画キャンセルなどにより、これまでに10億ドル規模の損失が生じたという。
新型コロナのパンデミックでは、ワクチン実用化の当初、供給量が限られ、アフリカなど資金力が乏しい新興国で接種が遅れる問題が発生。その後、各国政府や国際機関の後押しを受けて、製薬各社にワクチンや治療薬の現地生産を検討する動きが相次いだ。
だがパンデミック収束以降は、コストや技術移転の問題がネックとなり、計画の進展が遅れている。世界保健機関(WHO)が進める非常時の新興国でのワクチン生産支援などを含む「パンデミック条約」も交渉難航が伝えられる。
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