ロシアではワグネル創業者の故プリゴジン氏の銅像が設置された(1日、サンクトペテルブルク)=ロイター

ロシアの民間軍事会社ワグネルが武装蜂起してから23日で1年となった。プーチン政権はワグネルの解体・再編に加えてロシア国防省や軍の統制強化を急ぐ。ウクライナ侵略の長期化に備えて体制を引き締めようとしている。

ロシアの北西部サンクトペテルブルクの墓地で1日、ワグネル創業者の故エフゲニー・プリゴジン氏の誕生日に合わせて銅像の除幕式が開かれた。ロシア紙コメルサントによると、墓地の入り口では警察官が来訪者をチェックする厳戒態勢の中、人々は列をなして花を手向けた。

プリゴジン氏は2023年8月、搭乗した小型ジェット機がモスクワから北西方向に飛行中に墜落、同乗した幹部らとともに死亡した。プーチン氏は同年10月に「遺体から手りゅう弾の破片が発見されたとの報告を受けた」と発言、ミサイルなど外部からの攻撃によるものではないとの見方を示した。

政権は関与を否定している。だが米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは同年12月、西側当局者らによる情報としてプーチン氏の側近であるパトルシェフ安全保障会議書記(当時)が関わったと報じた。

ワグネルは武装蜂起の鎮圧後に組織解体と再編が進んでいる。戦闘員は反乱時で2万5000人以上いたとみられる。ロシア国内に残る戦闘員はロシア国防省や治安維持を担う国家親衛隊などに移籍しているもようだ。

ロシア通信によると、南部チェチェン共和国のカディロフ首長は24年4月、同氏の影響下にある特殊部隊「アフマト」に3000人のワグネルの元戦闘員が参加すると明らかにした。アフマトはウクライナ侵略にも参戦しているとされ、元戦闘員の一部は所属組織を変えて戦線に加わっているとみられる。

ウクライナ侵略は22年2月の開始からおよそ2年4カ月が経過し、前線の兵士の損耗は激しい。ロシア国防省は国民の懸念が強い部分動員ではなく、志願兵である契約軍人を増やして兵士の補充を進めている。

プーチン氏は今月7日にサンクトペテルブルクで開催した経済フォーラムで「動員は計画していない」と改めて強調した。同氏によると24年に入り16万人以上が契約軍人になったという。

ロシアが軍事や資源分野で関係を深めるアフリカ諸国では、ワグネルの一部がロシア国防省などの指揮下で活動を続けているとみられる。仏紙ルモンドは16日、1500〜2000人の兵士を擁するワグネルの部隊が中央アフリカで活動中と報じた。現地の治安維持活動などを担っているもようだ。

ロシアの独立系メディアは4月、ワグネルは2月からアフリカに派遣する戦闘員の募集を再開したと報じた。22歳から50歳までの男性が対象という。

ワグネルの再編が進む一方、ロシア国防省では今春以降、人事の刷新が目立っている。プリゴジン氏は武装蜂起前に、兵器調達の不備などでショイグ前国防相ら幹部への批判を強めていた。

通算5期目に入ったプーチン氏は5月、新政権の発足に伴って国防相をショイグ氏から経済の専門家であるベロウソフ氏に交代させた。6月にはショイグ氏に近かったとみられる国防次官を解任し、プーチン氏の遠戚にあたるツィビリョワ氏らを後任に充てた。汚職や収賄容疑による高官の摘発も相次いでいる。

ロシアの政治学者、グリゴリー・ゴロソフ氏はワグネルについて「自律的な動きが軍隊の指揮系統を混乱させた」と指摘する。

プーチン政権は国防省や契約軍人を含むロシア軍の統制管理を強化し、22年秋に一方的に併合したウクライナ東・南部4州の非制圧地域に優先的に戦力を投入し、将来的なウクライナとの停戦交渉に備える構えとみられる。

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