アリゾナ州最高裁は中絶全面禁止法の効力を認める判断を示した=ロイター

【ワシントン=芦塚智子】米西部アリゾナ州の最高裁は9日、人工妊娠中絶をほぼ全面的に禁じた160年前の州法の効力を認める判断を下した。アリゾナは11月の大統領選の激戦州で、判断は選挙戦に影響を与えかねない。

同州法はアリゾナが州になる前の1864年に成立し、受精時点からの中絶を禁じる。レイプや近親相姦(そうかん)による妊娠にも例外を認めない。連邦最高裁が中絶の権利を認めた1973年の判決によって効力が停止した。

連邦最高裁は2022年6月に1973年の判断を覆し、各州が州法で中絶を禁止・規制できるようにした。これを受けてアリゾナ州では22年3月に成立した妊娠15週以降の中絶を禁止する州法が発効した。

アリゾナ州最高裁の判決は、22年3月成立の州法を事実上無効とし、1864年の全面禁止法が「執行可能だ」とした。ただ、法の発効まで14日間の猶予期間を設け、下級審で再び審理することを認めた。当面は発効しない見通しだ。

大統領選で再選を目指すバイデン大統領は9日の声明で、アリゾナ州最高裁の判断を「女性の自由を奪い取ろうとする共和党の過激な計画の結果だ」と批判した。「我々は生殖を巡る権利を守るために闘い続ける」と強調した。

ハリス副大統領は12日に中絶の権利擁護を訴えるためアリゾナ州を訪問する予定だ。

大統領選の激戦州南部フロリダ州でも1日、州最高裁が妊娠6週より後の中絶を禁じる州法の発効につながる判断を出した。

フロリダ州は大統領選と同時に中絶の是非を問う住民投票を予定している。アリゾナ州でも中絶の権利擁護派が住民投票の実施を目指している。大統領選で中絶の権利擁護派の投票率上昇につながる可能性がある。

大統領選で共和の候補指名が確定したトランプ前大統領は8日、中絶の規制は州が決めることだとして全米一律の禁止は支持しない立場を表明した。

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