手足の急速な壊死(えし)や多臓器不全を引き起こす「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」の原因となる溶血性レンサ球菌(溶連菌)について、塊状になって菌の働きを抑える特殊な分子を発見したと、神戸大などの研究チームが7日までに米化学誌電子版に発表した。致死率が30%と高く「人食いバクテリア」と異名を取る劇症型の治療薬開発に活用できると期待される。

神戸大の丸山達生教授(応用化学)によると、溶連菌はDNAを分解する酵素を出し、人体を守ろうとする白血球の働きを妨げることで病状が急速に進行する。

神戸大の丸山達生教授=共同

チームは筋ジストロフィーの治療研究にも使われる「Mannan007」という化合物が水中で塊になると、酵素の働きを阻害することを発見。塊になり面を作ると菌を捉えやすくなり、酵素に結合して働きを抑えるという。

溶連菌と共に血液に加えると、菌の増殖率が60%程度に抑制された。白血球が正常に働き感染を防いだと考えられる。化合物は水中で勝手に塊になるため血液中では血栓になるリスクがあるが、塊のサイズを小さくすることで解決できる。

国立感染症研究所によると、4月21日までの劇症型の患者数は全国で730人で、昨年同期を上回る。白血球を正常に働かせる薬ができれば、現在の治療薬と併用することで致死率の低下につながる可能性がある。丸山教授は「さまざまな病気の治療薬への活用も可能だ」と話した。〔共同〕

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