米アルファベット傘下の米ウェイモは17日、配車アプリ大手のGO(東京・港)や日本交通(東京・千代田)と提携して、自動運転技術の実証を東京都内で2025年に始めると発表した。ウェイモが海外に進出するのは初めて。日本のタクシー業界は運転手不足が深刻だ。課題の解決に向けて自動運転を試す動きが広がりそうだ。

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3社はウェイモの自動運転技術のWaymo Driverの実証を都内で進める戦略的パートナーシップを結んだ。25年初めごろから25台体制で始める。日本交通の運転手が都心7区(港、新宿、渋谷、千代田、中央、品川、江東)の公道でウェイモの車両を運転する。特定条件下で無人運転が可能となる「レベル4」の自動運転サービスの商用化を見据え、地図データの取得などを進める。

ウェイモは20年から米アリゾナ州フェニックスで一般の利用者向けに自動運転車を使った無人の配車サービスを始めた。その後、カリフォルニア州のサンフランシスコとロサンゼルスにも拡大。テキサス州オースティン、ジョージア州アトランタ、フロリダ州マイアミでの計画も発表しており、試験提供も含めると運行予定は24年で計6都市に及ぶ。

一般提供に移行した地域では、スマートフォンの専用アプリで行き先を入力してウェイモの車両を呼び出し、ドアのロックを解除して乗車する。アプリ上のクレジットカードで精算し、緊急時には車両からオペレーターにつながる仕組みだ。有料サービスは各都市合計で週10万回の利用に及んだ。

走行の知見を蓄えるため25年はさらに地域を拡大する方針だ。日本は初の海外での試験提供地域となる。

ウェイモが東京を選んだ理由

ウェイモが東京を選んだポイントの一つは密集した都市部である点だ。同社は英ジャガー・ランドローバーの電気自動車(EV)を使っており、電気が減ると車両が自ら充電スタンドに向かう。EVは一度の充電で走れる距離がまだ限られることもあり、狭い範囲で利用者を確保しやすい東京に白羽の矢が立った。

日本でも自動運転を受け入れる土壌はある。人手不足に悩むタクシー業界が解決策を模索しているからだ。一般運転手による有償の旅客輸送となる「日本版ライドシェア」が解禁され、業界は変革期にある。

インタビューに答えるGOの中島社長(17日午後、東京都港区)

GOの中島宏社長は「日本の自動運転技術の社会実装は米国や中国に比べて数年遅れている。ウェイモは乗車回数の実績など、世界最高水準の技術を持つ会社だ。GOでの無人タクシー配車を、ぜひ実現したい」と期待する。

もっとも、実現には安全面での技術改良が課題となる。12月に自動運転タクシー事業からの撤退を表明した米ゼネラル・モーターズ(GM)は、傘下の自動運転会社が23年に人身事故を起こし有料サービスの停止に追い込まれたことなどがその遠因となった。ウェイモも2月に車両が破壊され炎上したトラブルが発生している。

自動運転の技術改良のカギを握るのが人工知能(AI)技術の改良だ。アルファベットはAI開発に注力しており、特に画像生成AIなどに使う基盤技術の高度化を進める。実際の交通データで起こるシミュレーション技術をさらに発展させ、人や車両の動きをより前から予測することで事故を回避できるとみている。

中島氏は「社会実装に向けては様々な課題を乗り越えていかないといけない。ただ、危険な状態でサービスをローンチすることはない。慎重に進めていく」と語った。

自動運転に詳しいSOMPOインスティチュート・プラスの新添麻衣上級研究員は「自動運転技術を利用して持続可能なかたちで独立採算を目指すなら現状はタクシーしか手段がないだろう」と話す。そのうえで「ウェイモが自動運転で積み上げてきた実績はトップレベル。国内で自動運転技術を開発する企業にとっては『黒船』となる」と指摘する。

(鷲田智憲、シリコンバレー=渡辺直樹)

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