伊予鉄道が導入した新型車両7000系

四国の民間鉄道が新型車両の導入に動いている。香川県の高松琴平電気鉄道(琴電、高松市)は12日、1960年以来となる新型車両のデザインを発表した。愛媛県の伊予鉄道(松山市)は計約40億円を投じ、67年ぶりに新型車両を導入する。老朽化が進む車両の更新が必要になる中、中古車両の調達コストが増えていることも背景にある。

琴電は2025年度以降に新造車の「2000形」を導入する。製造はJR東日本子会社の総合車両製作所(横浜市)が担う。詳細な導入時期や車両数については未定としている。

車両の外観はブランドカラーの青色を基調としたステンレス製とする。内装には草木が生い茂る「蒼」をコンセプトに緑色やベージュを取り入れる。

琴電が発表した新型車両のイメージの一つ

車両側面の配色は3つの案を用意した。一般投票で最終デザインを決める。オンライン投票を受け付けるほか、一部の駅などに投票箱を置く。27日から25年2月15日までを投票期間とし、同年3月に結果を発表する。

3つのデザイン案から投票で選ぶ

伊予鉄グループ傘下の伊予鉄道は25年2月から、松山市駅(松山市)と郊外を結ぶ全路線で新型車両「7000系」の運行を始める。27年まで毎年6車両ずつ計18車両を導入し、総投資額は約40億円。現行の700系は順次廃車とする。

新型車両は愛媛らしいオレンジ色で流線形のフォームが特徴だ。軽量ステンレスを採用し、制動エネルギーを電力として再利用できるVVVF制御で環境性能を高めた。

車内は中づり広告や網棚を取り払うなどし、ゆったりした空間にした。デジタルサイネージ(電子看板)で英語の表記やアナウンスも行う。車内放送は全自動化し、運転手の負担を軽減する。

新型車両はクレーンなどを使い伊予鉄路面電車の線路に下ろされた

琴電と伊予鉄はこれまで県外の大手私鉄などの中古車両を使ってきた。琴電は京浜急行電鉄などで走っていた車両を改造して使用している。伊予鉄道の車両も京王電鉄が使っていたものだ。

中古車両は老朽化が課題となっている。琴電では24年11月末時点で保有する80両の平均車齢は55年で、伊予鉄道の700系も1960年代前半から使われていた車両になる。

ただ、中古車両の調達コストは増加している。琴電によると譲渡車両の価格はここ十数年で高騰しているという。琴電の植田俊也社長は12日の記者会見で「従来は5000万円程度だったものが3億円近くになっている」と明かした。

市場に出回る中古車両の数自体も少なくなった。「大手私鉄が車両を長く使うようになり、全体的に数が出なくなった」(琴電の植田社長)という。鉄道各社は車両の運用期間を5〜10年延ばしており、調達の難易度は上がっている。

伊予鉄も700系の機器類の更新が困難であることを新型車両の導入の一因に挙げる。鉄道ファンにはうれしい新型車両だが、事業者の頭を悩ませる状況は続きそうだ。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。