日銀の中村豊明審議委員は5日、広島市で講演し、今後の利上げに関し「多くのデータを確認し、経済の回復状況に応じて金融緩和度合いを慎重に調節していくことが重要な局面だ」との考えを示した。利上げの重要な判断要素となる賃上げについては「まだ持続性に自信を持てていない」と述べた。
中村氏は「人手不足が深刻化し、雇用の流動化や賃金上昇が進み始めた」とする一方、「少子高齢化、人口減少による需要低迷と供給制約、低収益化した産業構造などの問題があり、中小企業中心に投資回復が遅れている」と指摘。2%物価安定目標の持続的・安定的な達成のためには「企業の稼ぐ力の向上による経済の成長軌道回帰への期待に自信が持てる経済構造への変革が必要だが、相応の時間がかかる」と語った。
中村氏は物価について「2025年度以降は2%に届かない可能性がある」との見方も示した。
米国経済に関しては「(過去の)利上げの影響を受けつつも、個人消費を中心に底堅く推移し、ソフトランディング(軟着陸)期待が高まっている」としつつ、「求人件数や消費者信頼感指数の低下傾向など一部に景気減速の兆候も見られる」と強調。来年1月にトランプ政権が発足することを踏まえ、「今後の景気展開や政策運営などを受け、インフレが再燃するリスクにも注意が必要だ」と述べた。(了)
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