経営概況説明会で話す三井化学の橋本修社長(26日、東京都中央区)

三井化学は26日、2031年3月期の投下資本利益率(ROIC)を9%以上、自己資本利益率(ROE)を13%以上とする経営目標を発表した。従来目標から上方修正した。収益が低迷している事業の再構築や政策保有株の売却などで資産を圧縮。投資も重点領域に集中して事業の収益力を高め、資本効率の向上を目指す。

同日開いた経営概況説明会で収益関連の新たな目標を示した。従来は31年3月期にROIC8%以上、ROE10%以上を目標としていたが、それぞれ引き上げた。26年3月期以降の総還元性向も従来の30%以上から40%以上とする。

本業のもうけを示すコア営業利益は26年3月期に2000億円を目指していたが、達成時期を29年3月期に後ろ倒しする。石油化学事業の低迷や成長領域も想定より伸び悩んでいることが要因だ。31年3月期に2500億円とする目標は据え置いた。純利益は構造改革の前倒しの効果やプラントの撤去費用の低減などで、31年3月期に1500億円以上と従来目標から100億円上積みした。

収益改善や資本効率の向上に向けて事業構造改革や資産の圧縮を進める。石化関連では国内で合成樹脂のポリプロピレンで千葉県で1系列の停止を検討するほか、海外でも他社との連携なども模索する。成長領域でも低採算事業は再構築を進める。改善が見込めなければ「ベストオーナーを探してそちらに回すという決断もドライにやっていかざるを得ない」(橋本修社長)とした。

半導体や自動車、メガネ向けの材料など成長領域とする3つのセグメントは31年3月期で12〜15%のROICを想定する。石化事業は従来予想(8%)より低い6.5%程度を見込む。

石化事業では自社での生産規模の縮小などに加え、基礎化学品のエチレンなど再編で設備が共同所有になった場合には資産の減少が見込まれる。今回の算定での詳細は示さなかったが「公表している再構築や再編の延長ベースで、ある想定を置いて積み上げた数字だ」(橋本社長)とした。追加の施策によってさらに資産が減り、石化事業のROICは6.5%を上回る可能性もあるという。

25年3月期〜31年3月期の7年間に、事業の利益から約1兆6000億円、政策保有株の削減など資産の圧縮で約2000億円、資金調達で約1000億円と合計約1兆9000億円のキャッシュ創出を見込む。そのうち1兆6000億円は成長や設備維持のために投資し、3000億円は株主還元強化に充てる。

足元の営業キャッシュフロー(CF)は年1000億〜1500億円程度だが、31年3月期のキャッシュ創出目標の達成に向け年2000億〜2500億円程度を目指す。

(岡田江美)

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