◆80代夫婦に睡眠作用のある薬物を服用させ…
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広島県警によると、強盗殺人未遂と現住建造物等放火の疑いで逮捕されたのは無職、梶原優星容疑者(29)=神奈川県葉山町。逮捕容疑では、7月28日午後5時35分~7時45分、広島市西区の住宅で、80代の夫婦に睡眠作用のある薬物を服用させ、何らかの方法で火を付け、現金約2600万円とボストンバッグ1個を奪ったとされる。 当時、野村証券広島支店で営業担当をしていた梶原容疑者。顧客だった夫婦に自宅での食事を持ちかけ、その際に薬物を混入したとみられている。意識もうろうとなった夫婦だったが、火事に気付き、逃げて無事だった。 梶原容疑者は個人投資での損失があり、県警は奪った現金で穴埋めをしようとした可能性があるとみている。一方、梶原容疑者は「お金は盗んだが殺そうとは思っていないし、火は付けていない」と容疑を否認しているという。◆野村HDが事案を把握したのは約3カ月前
野村証券の大手町本社が入るビル=11日、東京都千代田区で
ただ、顧客の信頼を悪用して犯行に及んだとなれば、証券ビジネスの土台が崩れかねない事態だ。会社はどう対応してきたのか。 野村HDによると、梶原容疑者から8月2日に「顧客の資金を盗んだ」との申し出が会社にあり、2日後の4日付で懲戒解雇した。 ただ対外的な公表は、広島県警の逮捕発表から1週間後の11月6日。「当社元社員の逮捕について」と題するリリースを出し、「大切な資産を預かる金融機関として、二度とあってはならないと重く受け止めている」などと謝罪した。当面の措置として、営業担当者が顧客宅へ訪問する際は事前承認のルールを導入し、社員の行動監視を強化する施策も検討するという。 5日から広島支店に役員を派遣し、現地対応を強化しているともするが、野村HDが顧客の現金を盗んだ事案を把握したのは約3カ月前。スピード解雇とは対照的に、公表や対応は鈍くないか。広報担当者は「捜査に協力をしてきた。会社として公表が遅れてしまったことは申し訳ない」としながらも、3カ月を要した理由については「コメントできない」と回答した。◆富裕層向けの営業人員の育成を進めていたが…
野村証券の大手町本社が入るビル=11日、東京都千代田区で
富裕層向けビジネスを重視する野村HDは今年4月、営業部門を「ウェルス・マネジメント部門」と改称。株式などの売買手数料に依存する事業モデルから脱却し、資産管理サービスに力を入れるため、全国の個人担当者の大部分を富裕層担当にした。3メガバンクグループの証券会社も富裕層向けの営業人員の育成や増員を進めている。 注力する部門で起きた今回の事件について、経済ジャーナリストの町田徹氏は「富裕層への対面営業は、ネット証券にはない既存の証券会社の強みだ。長所を自らつぶす行為だ」と指摘し、「放火や殺人未遂というのは凶悪犯罪だ。富裕層ビジネスが拡充する中での衝撃は大きく、野村証券にとどまらず、証券業界全体の信頼を大きく傷つけた」と断ずる。 信頼回復に向け、こう提言する。「営業担当者1人と顧客だけの環境が生まれないようにしなければならない。対面営業に上司や管理職が同行したり、モニタリングを導入するなど、地道に対策を講じるべきだ」
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