決算内容を説明する東北電力の樋口社長(30日、仙台市)

東北電力は30日、2024年3月期の連結最終損益が過去最高の2261億円の黒字(前の期は1275億円の赤字)となったと発表した。火力発電の燃料費の下落分を電気代に反映するのが遅れることによる「期ずれ差益」や、発電効率が高い上越火力発電所を年間を通じて稼働できたことなどが利益を押し上げた。傷んだ財務の回復には原子力発電所の早期再稼働がカギを握る。

売上高は前の期比6%減の2兆8178億円、本業のもうけを示す営業損益は3222億円の黒字(前の期は1800億円の赤字)、経常損益は2919億円の黒字(前の期は1992億円の赤字)だった。電気料金の値上げや再生可能エネルギー買い取りに関する交付金の増加もあり営業利益、経常利益ともに過去最高となった。

樋口康二郎社長は記者会見で「期ずれといった一過性の要因を除いた経常利益は1979億円」と説明した。年間を通じて上越火力を動かせたことや燃料調達の効率化などが要因だ。3月末時点で有利子負債残高は3兆2909億円で、当初計画を上回る846億円を減らすことができた。ただ、自己資本比率は15.4%と依然として低い状況にあり、「電力の安定供給には財務基盤の早期回復が必要」(樋口社長)と警戒する。

25年3月期は小売り電力が減る一方で卸売り電力は増加すると見込んでおり、販売電力量が4%増えると想定する。売上高は前期比微増の2兆8300億円、営業利益は32%減の2200億円、経常利益は35%減の1900億円、純利益は43%減の1300億円と見通す。年間配当予想は前期比15円増の30円とした。

9月の再稼働を目指す女川原子力発電所(宮城県女川町、石巻市)2号機の影響も踏まえた。予定通りに再稼働することができれば、24年度の火力発電の燃料費想定をベースに計算すると、1カ月あたり約70億円の燃料費削減効果があるという。経常利益を400億円押し上げる形だ。最高財務責任者(CFO)の砂子田(いさごだ)智副社長は「原発再稼働が与える財務(基盤)回復への影響は大きい」とみる。

もっとも2期連続の最終黒字を見通すとはいえ、財務状況は厳しい。25年3月末時点の有利子負債残高は女川原発の再稼働や再エネの送電線工事などへの投資で1000億円ほど増えて3兆3900億円程度となる見込みだ。電力料金の値下げについて樋口社長は「今後の収支や財務状況、経営の効率化などを総合的に勘案し、料金見直しを検討していく必要がある」と述べるにとどめた。

同日、31年3月期を最終年度とする中長期ビジョンを発表した。再エネなどの事業展開、財務基盤の早期回復、デジタルトランスフォーメーション(DX)など経営基盤の強化を3つの柱とする。火力発電の脱炭素化や再エネなどに3000億円程度の投資を実施し、株主資本配当率(DOE)2%を目安とした安定配当も目指すという。

新たな財務目標として31年3月期に連結ベースの経常利益を2000億円以上、自己資本比率を25%以上、事業活動に投じた資金を使って効率よく利益を上げているかを示す投下資本利益率(ROIC)は3.5%以上を掲げた。

(三宅樹)

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