ワコール(京都市)は、性の在り方や障害の有無にかかわらず全ての客が安心して利用できる売り場づくりを目指そうと、従業員向けの接客指針を手引にまとめ、公開した。接客現場ではLGBTQ(性的少数者)や障害者らさまざまな客の困り事に見た目だけでは気付けないことも多い。担当者は「思い込みを減らし、柔軟な対応を心がけたい」と話す。(共同通信=我妻美侑)
ワコールは主に女性向けの下着売り場を展開する。これまで試着の案内は見た目や会話の内容から女性と判断した客を対象にしてきたが、自認する性別が出生時と異なるトランスジェンダーや異性の装いをするクロスドレッサーの客への対応が課題となっていた。
手引は、性的少数者向けの就職情報サイトを手がける企業や法律の専門家が監修し、多様な性の在り方の基礎知識を解説している。性別にとらわれない言葉の選び方や試着室への案内方法を示した。
障害のある人や高齢者など視覚や音声で情報が得にくい客を念頭に置いた対応例も載せた。場所を伝える時は、指示語ではなく「右」や「前」といった具体的な言葉を使ったり、筆談の道具を準備したりする。
他に、オンラインでも誰もが買い物しやすいウェブサイト作りの注意点や、従業員の人権を守るためカスタマーハラスメントへの対応方針も盛り込んだ。
マイノリティーに寛容な社会の実現に向けて、2023年6月には性的少数者への理解増進法が、今年4月には障害者の困り事に無理のない範囲で対応する「合理的配慮」を民間企業に義務化した改正障害者差別解消法が施行された。
無意識の思い込みや偏見の解消が求められており、商業施設やホテル、ドラッグストア業界などでも消費者や利用者の多様性に配慮した取り組みが進んでいる。
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