コメとチョコが上昇率押し上げ

8月の消費者物価指数は生鮮食品を除いた指数が、去年の同じ月より2.8%上昇しました。

総務省は「コメとチョコレートの値上がりが上昇率を押し上げた」としています。

8月の消費者物価指数 去年同月比2.8%上昇 米の値上がり影響

パックごはんも値上げ

原料のコメの値上がりなどで生産コストが上昇しているとして、新潟市にある食品メーカーは、ことし12月の出荷分からパックごはんを値上げすることにしています。

新潟市に本社がある食品メーカーでは、新潟県や北海道にある工場で1日あたり123万食のパックごはんを作っていますが、生産現場を悩ませているのが、原料のコメをはじめとする生産コストの上昇です。

新潟県聖籠町にある工場の1つでは、1日あたり40トンのコメを加工しますが、こうした大量のコメの仕入れ値が上がっているということです。

さらに工場の生産レーンを動かす電気代や包装代、輸送費も値上がりしていて、生産工程の効率化などを進めているものの、こうした努力だけでは生産コストの上昇分を吸収しきれないとしています。

このため、この食品メーカーではことし12月の出荷分から、パックごはんのすべての商品を税抜きの希望小売価格でおよそ11%から14%値上げすることにしています。

「サトウ食品」の渡辺今日子取締役は「最大限の稼働を目指して生産方法を工夫しているが、残念ながらそれだけでは吸収できない波が来ているというのが現状です」と話していました。

せんべい 米菓も値上げ

主にせんべいなどの米菓を作っている新潟市の菓子メーカーは、せんべいの原料となる加工用のコメが値上がりするなど、生産コストが上昇しているとして、10月の納品分から一部の商品を値上げすることにしています。

新潟市に本社がある菓子メーカーでは、主にせんべいなどの米菓を作っていますが、原料となる加工用のコメなどの価格が値上がりしているということです。

さらに去年の夏の猛暑などの影響でコメの流通量が減っていることから、加工用のコメの確保が難しい状況にも直面しています。

メーカーでは、より確保しやすいアメリカ産のコメの割合を増やして対応しているということですが、コメの価格のほか、調理に使う油や包装にかかる費用なども上がっていることから、来月の納品分から一部の商品について値上げすることにしています。

引き上げ幅は店頭価格で、9%から22%程度となる見込みだということです。

「亀田製菓」経営企画部の佐藤忠信マネージャーは「原料のコメの値上がりはマイナスの影響が非常に大きく出ている。商品の値上げは心苦しいが、そういう対応をとらざるをえないというのが今のわれわれをめぐる事業環境になっている」と話していました。

チョコレートケーキも値上げ 

チョコレートの原料となるカカオ豆の価格が高騰していることを受けて、千葉市美浜区にある洋菓子店では9月上旬からチョコレートを使った4種類のホールケーキをおよそ100円から800円値上げしました。

店ではケーキなどの材料として10種類以上のチョコレートを仕入れていますが、種類によってはことしに入って価格がおよそ2倍になるなど、チョコレートの仕入れ価格が大幅に上昇したことから、今回の値上げに踏み切ったということです。

小麦粉や砂糖などの原材料価格や人件費などの上昇を受けて、ことし6月にも今回値上げしたケーキを含む20種類以上のホールケーキを値上げしました。

チョコレートの価格が今後さらに値上がりする可能性もあることから、店では商品のサイズの見直しやチョコレートの配合量を抑えた商品開発など対応を検討していくということです。

洋菓子店「スイーツミズノヤ」のシェフ、水野谷祐一さんは「チョコレートはもともと安い材料ではなかったが、高級品を通り越した価格になっている。商品の価格を上げすぎるとお客さんが離れてしまうものの、価格を抑えることができない状況で、どう工夫したらよいのか悩ましいです」と話していました。

秋の味覚 さつまいもも…

秋の味覚の代表格さつまいもも値上がりする傾向となっています。

総務省が20日発表した8月の消費者物価指数では、さつまいもは、7月から3.8%、前の年の同じ月と比べると6.3%上昇しています。

さつまいもの生産者によりますと、ことしは豊作だということですが、去年と比べて肥料や雑草を防ぐためのシートの費用がいずれも1.5倍ほどになるなど、資材費を中心に経費が高くなっているということです。

みずから営む直売所では価格を据え置きたいとしていますが、スーパーなどに出すものに関しては値上げせざるを得ず、小売価格も1割ほど上がる見通しです。

10月は酒も値上げ

10月に値上げされる食品の数は、9月より一段と増えて、2000品目を超える水準となる見通しです。

民間の信用調査会社帝国データバンクが国内の主な食品メーカー195社を対象に行った調査によりますと、今月値上げされる食品は1300品目あまりと5か月ぶりに1000品目を超えました。(8/30現在1392品目)

品目別に見ますと、9月は冷凍食品を中心とした「加工食品」が全体の半数以上を占めたほか、アイスやチョコレート製品などの「菓子」とウイスキーやコーヒー飲料といった「酒類・飲料」がそれぞれ全体のおよそ1割を占めました。

また来月は値上げされる品目がさらに増えて、加工食品や飲料など2000品目を超える見通しです。(8/30現在 2631品目)

去年の同じ月に比べると、半数近くに減るもののことしに入って最も多かった4月に並ぶ水準になる見通しだということです。(4月 2897品目)

調査した会社では、値上げの背景には、異常気象などによる原材料高や、物流費や包装資材の費用、それに人件費の増加などがあり、去年に比べると値上げの対象となる品目は少ないものの、複合的な値上げ圧力は高止まりした状態だと指摘しています。

専門家「物価を上回る賃金の伸び確保が重要」

この秋に食品の値上げが相次ぐことについて、日本総合研究所の西岡慎一主席研究員は「おととしと去年ほどの値上げの勢いではないものの、ことしの夏場にかけて円安が進み、輸入している原材料の価格が上昇したため、このタイミングで価格転嫁する動きにつながっている。また人件費を理由に値上げする企業も去年に比べると増えている」と話しています。

また、個人消費に与える影響については「全体の消費がものすごく抑えられることは考えにくいが低所得者や高齢者への影響を注視する必要がある。賃金は上がってきていてもその上がり方は物価の上昇ほどではないという意識が強いと思うので、所得水準が上がった実感が得られるまでは消費意欲は戻ってこない可能性がある」と指摘しました。

その上で「消費が盛り上がらないと企業は収益を抑えられ次の賃上げが難しくなるという悪循環に陥ってしまう。物価を上回る賃金の伸びを確保していくことが重要だ」と話しています。

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