卸電力のオンライン取引を仲介するエネチェイン

卸電力のオンライン取引所を手掛けるenechain(エネチェイン、東京・港)は26日、第三者割当増資で総額50億円を調達したと発表した。既存の卸電力市場は価格変動が大きく、新電力などの小売会社の経営安定化が課題となっている。エネチェインは中長期の調達価格を事前に決める取引手法を活用し、今回出資を受けた大手電力や商社、ガス会社などとともに電力調達市場の安定化と活性化をめざす。

第三者割当増資はJERAや関西電力グループ、中部電力グループ、北海道電力、大阪ガス、東京ガス、住友商事、三菱商事など計17社が引き受けた。米著名投資家ジョージ・ソロス氏の一族が運営する投資会社ソロス・キャピタル・マネジメントも出資した。銀行からも10億円を借り入れた。

エネチェインが手掛ける取引所「eSquare(イースクエア)」は、発電会社と新電力など小売会社の取引をオンラインで仲介する。主に1カ月から1年先の電力の調達価格を事前に決める「先渡し取引」という先物に似た手法で、価格変動リスクを回避できる。パソコンなどで他の売買価格や取引結果を確認できるため透明性が高く、市場の動向を把握しやすい。足元では約250社が利用し、年間取引高は1兆円に達する。

今回の調達資金で取引参加者の最適な電力調達を人工知能(AI)を活用して支援する新機能を開発し、2025年に投入する計画だ。3年後に取引高を10倍に拡大することを目指す。エネチェインの野沢遼社長は「公平で世界に比肩する日本のエネルギーマーケットをつくりたい」と意気込む。

同社は関西電力出身の野沢氏が19年に創業した。足元の従業員は約160人でエンジニアが4割を占める。調達資金はエンジニアやビジネス人材の採用にも充てる。

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