子育て当事者の市民団体「みらい子育て全国ネットワーク」(天野妙代表)は、自民党の総裁選に立候補した小泉進次郎元環境相(43)が残業(時間外労働)規制の緩和を訴えているのに対し、主張の撤回を求める緊急声明を出した。「ごく少数の『働かせる人』の意見に候補者の意識が向いているのではないか」と危ぶんでいる。

自民党総裁選の共同記者会見で質問に答える小泉進次郎元環境相=13日、東京・永田町の党本部で

 小泉氏は「現在の残業時間の規制は、原則として月45時間が上限。企業からも、働く人からも、もっと柔軟に働けるようにしてほしいという声がある」などとして残業時間規制の緩和を打ち出している。

◆「働き方改革の拡充」こそ先行導入を

 これに対し13日付の声明は「過重労働により若い命が失われる悲劇的な事件が相次ぎ、少子化との関連も指摘されている」とし、各候補者の公約で、長時間・過重労働の是正に関して具体的記載がないことを問題視。「緩和を論じる前に、インターバル規制の義務化、残業割増率を大幅に引き上げるなど、働き方改革をより拡充する施策を先行導入するべきだ」と訴えた。  日本では長年、労使が特別な協定を結べば残業の上限をなくすことが可能で、事実上の「青天井」だった。2015年に広告大手電通の新入社員だった高橋まつりさん=当時(24)=が過労自殺したことがきっかけとなり、罰則付きの時間外労働の上限規制を初めて導入、19年に施行されたばかりだ。  それでも長時間労働を巡る問題は後を絶たない。厚生労働省によると、23年度の過労死などに関する労災申請件数は、4598件と前年度比1112件の増加。死亡・自殺(未遂を含む)により、労災の支給が認められた件数も137件と同16件増加している。(竹谷直子) 

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