審理を終えて裁判所を出る米グーグルの弁護士ら(9日、米バージニア州)=ロイター

米グーグルのインターネット広告事業が独占に当たるかどうかを問う裁判の審理が米国で始まった。ネット広告はコンテンツ産業の拡大を支える一方、業界構造が複雑で実態が分かりづらい。日本を含む各地で業界の透明性を高め、コンテンツ産業の健全な発展につなげる必要がある。

米司法省などはグーグルのネット広告配信事業が反トラスト法(独占禁止法)に抵触しているとして2023年に提訴した。同社が広告を掲載するサイトの運営者、広告を出す企業の双方を顧客として抱え、さらに広告の取引市場で高いシェアを握っていることが問題とみている。

司法省は20年にグーグルのネット検索サービスを対象とした反トラスト法訴訟も起こしている。裁判では米アップルとの契約の詳細が明らかになり、8月の一審でグーグルは敗訴した。

背景にあるのは、ネット広告市場の急拡大だ。電通グループによると、23年には世界全体で4183億ドル(約58兆円)に達し、広告全体の6割に迫った。米国ではグーグルと米メタの2強が5割前後のシェアを維持し、世界的にも高い状態が続いている。

独占や寡占の弊害は競争が乏しくなることだ。

価格が高止まりして企業が本来より高額な広告費を払い、サイトの運営者も取り分が少なくなっている可能性がある。米国では広告を主な収益源としてきたメディア企業の経営が苦しくなり、地元のニュースを伝える報道機関がない「ニュース砂漠」が広がる。

有力な競争相手がいなければ、詐欺広告の取り締まりや、著作権を侵害するサイトなどへの広告配信を停止するといった対策も後手に回りかねない。

こうした問題意識のもとで、欧州では3月にデジタル市場法の本格的な運用を始め、ネット広告の価格について透明性を確保し、広告主に適切な情報を提供することを義務付けた。さらに、デジタルサービス法で不正確な広告などを規制した。

一方、日本では巨大IT企業に取引先との契約条件の開示を求めるデジタルプラットフォーム取引透明化法を21年に施行してネット広告を対象としたが、企業の自主性を重視して強制力が乏しい。企業側の非協力的な姿勢も目立つ。こうした状態が続くのであれば、より厳しい規制が必要になる。

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