文章や画像を自動で作る生成AI(人工知能)が発達し、ロボットに応用する動きが世界で加速してきた。産業用ロボットに強みを持つ日本も変化を好機ととらえ、ロボット産業を成長させ、労働力不足などの社会問題の解決につなげる必要がある。
最新の生成AIは文章に加えて音声や動画なども学習に使い、状況を認識したり判断したりする能力が向上している。ロボットと組み合わせることでいわば「手足」を獲得する形となり、応用範囲が事務作業から大きく広がる可能性が高い。
技術の発達を背景に、海外では事業強化の取り組みが進む。米テスラは7月、ヒト型ロボットの量産を2026年に始めると表明した。スタートアップ企業の設立も相次ぎ、半導体大手の米エヌビディアなどが支援している。
日本は自動車メーカーなどのロボットの大口需要家が国内に多い。モーターやセンサーといった要素技術の優位性も生かし、産業用ロボットで5割近い世界シェアを獲得した。一方、市場が急拡大する清掃や配膳などに使うサービスロボットでは米国や中国のメーカーに後れを取っている。
日本のロボット産業を強くするために不可欠なのは、生成AIをはじめとするソフトウエア分野の強化だ。ロボットメーカーが人材育成や採用に注力することのほか、産官学の協力も大事になってくる。国もこれらを積極的に後押ししてほしい。
ソフトの果たす役割が大きくなるなか、標準化を進めて関連する企業が協力する領域と、競争する領域を分けることも課題である。国内でも工作機械などの分野で企業間の役割分担が成果を上げており、成功事例から学ぶべきだ。
ロボットを活用したサービスの開発も重要になる。新サービスを生み出すためには利用者の深い理解が欠かせず、それは高性能なロボットの開発につながる。少子高齢化に伴う労働力の減少や、アニメなどを通じてロボットに親しんできた日本の社会風土はロボット産業の革新への追い風になる。
日本は携帯電話の高性能化で世界に先行したが、スマートフォンの開発では米アップルに敗れた。利用者の視点が乏しく、優れた利用体験を生み出せなかったことが一因だ。過去の経験を生かし、ロボットでは二の舞いを避けなければならない。
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