今も新型コロナウイルスは感染力を持ち続けているが、5類移行前のコロナ下で生まれた成長市場も多い。そもそも経済成長とは何か。新たな生活習慣が生まれて、様々な企業が参入と競争を繰り返す「経済圏」を形成することだ。
例えば男性用のコスメだったり、ノンアルコールだったり、従来の脇役が主役に転じる。ノンアルコールの場合、コロナ下での健康志向の高まりで成長した。2023年の5類移行によって足踏みが続くかと思いきや、24年は再び勢いが出つつある。
最大手のアサヒビールの場合、4月発売の「アサヒゼロ」が好調。1〜7月のノンアルコールビール市場の販売数量は前年同期比で二桁増だったという。味を改善し、ビールよりも安くおいしく飲めるようになったことも背景にあるようだ。
コロナ以降に新たな習慣を定着させたのがフレグランス(香水)だろう。巣ごもりの生活中、香りを部屋につけるルームフレグランスが人気に。マスク生活があり、香りへの希求が高まったのも一因だ。男性を含めて、自分にも香りをつける消費者が増えた。
香水というと、匂いの強さから敬遠する日本人は多かったが、今回のブームは少し様相が違う。かんきつ系や花など自然に近い香りが人気で、好きなタイプを長く楽しむ傾向が強いという。
先日、千葉県船橋市の商業施設を歩いていると、一風変わったフレグランスの店舗に遭遇した。売り場には「366 BIRTHDAY FRAGRANCE(バースデーフレグランス)」と銘打ち、なんとうるう年の2月29日を含めて、366日ごとに設定した香水を扱っていた。
月ごとのオイル12種に日ごとの香りを掛け合わせて、366日分の種類を実現している。
8月23日の場合、オイルはベルガモットで、ムスクの香りを融合させたフレグランスとなる。バースデーフレグランスを置く化粧品・香水専門店「フルーツギャザリング」を運営するエフ・ジー・ジェイ(東京・港)によると、「フレグランスはギフトとしても人気で、誕生日別はそれにぴったり」と解説する。
ちなみにフルーツギャザリングではタッチパネルで、自分にぴったりのフレグランスを探す診断サービスも始めた。
「どんな時に使いたいか」「演出したい自分にマッチするワードは」「『心地いい』から連想するワードは」などの質問に応じて選ぶと、最後に回答者に合うフレグランスカラーを決めてくれる。売り場はカラーごとに編集し、そこから「イヴ・サンローラン」や「マルジェラ」などの好きな商品を選ぶ流れだ。
近年は百貨店などもフレグランス売り場を拡張している。松屋は銀座本店(東京・中央)で、1階の化粧品売り場を2割拡大したが、柱はフレグランスだ。Z世代からの人気が高いからで、鼻が主役と銘打つ専門店のノーズショップには「香水ガチャ」まである。
エフ・ジー・ジェイの吉田和弘社長は「最近、百貨店で伸びている分野はフレグランスとサングラス。消費者の変身願望が強まっているのではないか」と分析する。香りや化粧にこだわる男子たち。「はなはだ」大きいコロナ後の変化である。
(編集委員 中村直文)
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