石油化学製品の市況が底入れし化学大手の営業損益が改善した

化学大手7社の2024年4〜6月期決算が8日、出そろった。営業損益は全社で前年同期に比べて改善した。石油化学製品の市況底入れが寄与した。半導体材料の需要もAI(人工知能)向けを中心に回復基調にある。一方外国為替市場で円高傾向が強まる場合は業績回復に水を差す可能性がある。

レゾナック・ホールディングスが8日発表した1〜6月期の連結決算は、最終損益が384億円の黒字(前年同期は198億円の赤字)だった。AI半導体の基幹部品である先端メモリー「HBM(広帯域メモリー)」向けの絶縁材料などが伸びた。石化事業ではナフサの価格上昇で在庫の評価益が膨らんだ。

4〜6月の3カ月の最終損益も113億円の黒字(前年同期は75億円の赤字)と大きく改善した。好調な実績を踏まえて24年12月期通期の業績予想を上方修正した。連結最終損益は345億円の黒字(前期は189億円の赤字)と従来予想から95億円引き上げた。

化学大手の4〜6月期決算は石化事業の採算が改善した。原動力は市況の底打ちだ。三菱ケミカルグループは営業利益が前年同期比22%増えた。需要は低調だったが供給制約が強まったことでアクリル樹脂原料MMAの価格が持ち直した。税負担が増え純利益は減った。

三井化学は石化事業のコア営業損益が40億円の黒字(前年同期は10億円の赤字)に転換した。基礎化学品エチレンなどを原料とする派生製品のポリオレフィンの値上げを進めたことで採算が良くなった。

半導体材料は回復に温度差がある。信越化学工業では主力の半導体ウエハー事業で口径300ミリ製品の需要が4〜6月期から回復している。AI向け需要がけん引し、半導体メモリーのDRAM向けが先行している。轟正彦取締役は「ウエハー需要はようやく底打ちした」と話した。

汎用向けは回復が鈍い。車載や産業用の200ミリウエハーは低調で、三井化学では製造工程で使う樹脂テープ「イクロステープ」などの回復が期初想定より遅れている。東ソーは製造装置の部材に使う石英ガラスの在庫解消が遅れて出荷が減った。

住友化学は4〜6月期の最終損益が243億円の黒字と7四半期ぶりに黒字転換した。医薬事業の構造改革が奏功したほか、半導体向けなど電子材料の伸びも想定を上回った。円安も利益を200億円近く押し上げた。

今期業績のリスクは為替だ。一時1ドル=160円を超えた円相場は7月中旬以降に急激に円高に転じた。各社の通期の想定為替レートは1ドル=145〜150円と、足元の145円前後に比べてやや円安水準に設定している。

化学企業は海外販売が多く、円高は業績の重荷になる。日米金利差の縮小が進めばさらに円高が進む可能性もあり、化学大手の業績回復基調が続くかは予断を許さない。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。