資材商社のシモジマの電子商取引(EC)事業が成長している。EC販売部門の売上高は2024年3月期に前の期比で17%増えた。競合のアスクルやモノタロウが認知度や売り上げなどで先行する中、全国の店舗を活用した「アナログ」を武器に背中を追う。
シモジマのECサイト「シモジマオンラインショップ」は食品包装材やラッピング用品、紙袋など、飲食店や小売店、イベントで使う資材などを幅広く取り扱う。13年にECサイトを本格的に稼働し、21年にはメーカーがサイトに出店するモール形式のページを追加した。24年3月期のEC部門の売上高は58億円と22年3月期から倍増し、全体の売上高に占める割合は24年3月期に1割を超えた。
好調の要因は商品数が増えて会員数も増加したことにくわえ、22年に行った組織改革にある。
もともと同社のEC販売は店舗販売と別部門で発足した。顧客が店舗でなくECサイトで購入した場合、店舗の営業成績には反映されない仕組みだった。
一方、同社の主力はアナログの営業販売で、包装材などを販売する店舗もフランチャイズ店を含め全国に260店ほど展開。地域の小売店などに赴く営業担当は全国に約200人ほどいる。店舗のスタッフも近隣の商店街などの顧客に注文を取るほか、商品の宣伝もするという。売り上げの7割近くを営業販売の部門が占める。
顧客の元に赴く営業担当からすれば、ECサイトはライバルにさえなっていた。「(ECサイトの)競合がどこかと言ったら、シモジマの営業だった」(担当者)
そこで、22年からは地域ごとに売り上げを集計する支社制度を導入した。同社では各店舗に「商圏」を設定し、営業のエリアなどを分けている。顧客の住所が商圏に属していれば、ECサイトでの売り上げも店舗の成績として計上される仕組みに変更した。
顧客がECサイトで商品を買っても、店舗の成績になることで、部門をまたいだ協力がやりやすくなった。現在では「(ECサイトを)カタログ代わりに顧客に商品を提案することもある」(店舗の従業員)という。
課題もある。競合のアスクルやモノタロウなどが業務用ECサイトで1000万以上の品目をそろえる中、シモジマオンラインは足元では100万程度だ。「マーケットサイズを拡大していかないと、競合には勝てない」と営業統括本部副本部長の尾尻新吾氏は話す。
顧客との接点を増やすため、都内などを中心に敷地面積の狭い店舗も出店し始めた。23年11月には東京都足立区に約50平方メートルの広さの「パッケージプラザ綾瀬店」をオープン。会員の購買情報を元に、強みのアナログの営業活動を展開する。デジタルを担うECサイトを、アナログの店舗や営業で拡大し、足元で70万人台の登録会員を26年3月期までに100万人に増加させる目標だ。
(柴田唯矢)
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