共通ポイントの草分け的な存在のTポイントと三井住友フィナンシャルグループのVポイントが22日統合し、青と黄色の新しいVポイントが誕生した。従来のTポイントとVポイントの加盟店でポイントをためたり使ったりすることができるほか、双方をID連携すると両ポイントを合算できる。

新しいVポイントのサービス開始記念イベントに登場した俳優の小栗旬さん(左)と吉高由里子さん

 Tポイントを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)によると、Tポイント利用者は約1億28000万人(有効ID数)。利用者が保有するTポイントは今後、新しいVポイントになるが、今まで通りTポイントの提携先で購入すればポイントがたまるほか、ためたポイントは従来通り1ポイント=1円としてそのまま使える。
一方、三井住友銀行や三井住友カードなどの利用でたまるVポイントの利用者は2600万人。日本国内だけでなく世界中のVisa加盟店でも使えるのが特徴となっている。  統合後の新しいVポイントでは、従来のTポイント利用者とVポイント利用者がそれぞれの加盟店でポイントを使ったり貯めたりすることが可能になり、利用者にとってはサービスの間口が広がる利点を得られる。  ポイントの統合により新しいVポイントを運営するCCCMKホールディングスの撫養宏紀取締役は「お財布にたまったポイントが一緒に使えたら便利だという発想で生まれた」と話した。

手でVサインをつくる俳優の小栗旬さん(左)と吉高由里子さん


 統合記念イベントに登場した俳優の小栗旬さんは「いろんなところでためて使える。うれしいですね」と紹介。吉高由里子さんは「たまるポイントが増えるのが楽しみ。ぶいぶいとVポイントを使っていただけたら」と笑顔をみせた。(石川智規)
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教えて ポイ探の菊地崇仁さん


 新しいVポイントの誕生により共通ポイントは5強時代に突入し、各経済圏の勢力争いは激しさを増しそうだ。賢くポイントをためて使うにはどうすればいいのか。ポイント交換案内サイト「ポイ探」を運営し、クレジットカードやポイントに詳しい菊地崇仁氏(48)に聞いた。 (聞き手・山田晃史)

大量の各種カードを手にするポイ探の菊地崇仁さん


 ―ポイントの代表的存在だったTが消えてVとなるのは時代の流れを感じます。  今日までの流れをおさらいすると、レンタル店のTSUTAYA(ツタヤ)でためられたTポイントは2003年にコンビニなど他の店舗でもためられるようになり、共通ポイントの先駆けとなりました。その後、2010年にPonta(ポンタ)ができて、「どっちの共通ポイントがお得なの?」というポイントブームが起きました。そして2013年、Tポイントとネット大手ヤフーのポイントが統合した。その時まではリアルの世界ではTポイント、ネットでは楽天ポイントやヤフーポイントと別々でした。Tポイントがヤフーと一緒になり、同じグループのソフトバンクもTポイントに変わった。  焦ったのが楽天と携帯キャリアですね。ネット最強ポイントと言われていた楽天ポイントでしたが、Tポイント連合に太刀打ちするにはリアルの世界に参入するしかなかったのです。それで実店舗でもためたり使えたりする楽天ポイントカードを2014年に始めた。  一方、携帯キャリアのauは13年にウォレット構想を開始し、プリペイドカードを出してauでためたポイントを加盟店で使えるという取り組みを始めた。そしてNTTドコモのdポイントが15年に共通ポイントに参入するという流れです。
 ―Tポイントが仕掛けて各社を刺激していたのも今は昔。なぜVポイントと統合することになったのでしょうか。 Tポイントは独りぼっちになってしまいました。ただ、資金力はないけれど20年前に始めているから知名度は抜群。そこで資金力はあるけど知名度は低い三井住友フィナンシャルグループのVポイントが、Tポイントの知名度を生かしてさらに伸びようというのが今回の統合です。これでようやくVポイントは他の4大ポイントに追いつきました。  他の勢力を振り返ると、Tポイントとポンタはもともと、他のポイントを入れてはいけないという排他契約を加盟店と結んでいたんです。後発の楽天とdポイントは、「別のポイントも入れていいですよ」と排他契約をせず、大量にポイントを発行して提携店を増やす戦略をとりました。楽天はネット通販、dポイントは携帯電話と潤沢な資金力があるからです。攻勢を受けてまずくなったTポイントとポンタ側のうち、ポンタは19年にauと組んで資金力を得て復活しました。  かたやTポイントはソフトバンク系の資金力を当てにしたかったのでしょうが、ソフトバンクはQRコード決済のPayPay(ペイペイ)を始め、(ポイントを)全部ペイペイにしました。

ポイントサービスの変化やその歴史について話すポイ探の菊地崇仁さん

 ―ほかのポイントは携帯電話やネット通販、QRコード決済などのサービスを軸に経済圏を作り、顧客の囲い込みに躍起です。しかし、新Vポイントはモバイルの軸がないほか、経済圏づくりに消極的と聞きます。どんな戦略なのでしょうか。  新Vポイントも経済圏を作りたいというのは多分あると思います。そもそも金融は強いですよね。後ろ盾がメガバンクなのと発行主体の三井住友カードも巨大な会社。Vポイントはタッチ決済をやっていて、そっちの方が国際基準で海外でも使える。スマホ決済については、利用者からすればQRコードのアプリをわざわざ開くより、タッチするだけの方が楽ですよね。今後はやれることを増やしていくと思いますよ。メガバンクの力は大きいですから。  各経済圏のサービスの表を作ると、強みと弱いところが見えてきます。各社はこの表をどう埋めていくかというように動いていくのではないでしょうか。  全部グループ内でそろえている楽天は経済圏として強く、どの企業も「対楽天」を意識しています。三井住友カードはアマゾンマスターカードも出していて、実は提携関係がある。今後、Vポイントとアマゾンに動きがあるかもしれないと個人的に思っています。  そのネット通販分野では、ペイペイはヤフーショッピングがある。dポイントは弱かったけれど、アマゾンと先日提携した。金融も弱かったからマネックス証券を子会社にした。  ―ポイントは分散するとたまりにくいのが定説ですが、ここまで種類が多いと1つの経済圏では生活できません。どうすればいいですか?  本当は1つに絞ればポイントが失効する前に使いやすいし、効率的です。ただ、1つの経済圏で生活できないのも事実。だとしたら、メインとサブで複数のポイントを併用するのが今後の主流だと思います。今はスマホのアプリで簡単に管理できますが、管理しきれないのなら何個かに絞るべきです。利用頻度が低かったり失効してしまったものからやめていけば、よく使うものが残ります。  その点、Vポイントはコンビニや飲食店の一部で7%の高還元をやっています。メインにはならなくてもサブ的な位置付けとして成り立つと思います。あと、みなさん鉄道には乗りますよね。JR東日本もポイントに力を入れていて、5月にはJRE BANKといった金融サービスにも乗り出します。私鉄も同様の動きがあります。沿線住民は鉄道は使わざるを得ない人がほとんどなので、サブの経済圏になる。鉄道系ポイントの動きは注目です。
 ―ポイントの使い方も選択肢が増えて迷います。賢い使い方を教えてください。  例えば、航空系のマイルは昔は特典航空券にするといった使い道に限られていたけれど、今はポイントとしてコンビニでも使えるなどお金に近い使い方ができるようになりました。ただ、ポイントは通貨ではないので発行企業のさじ加減で価値が変わる。例えば、今まで1ポイントが1円だったのを20ポイントを10円(1ポイント=0.5円)にしますよということもできてしまう。ポイント付与率を下げることもあり得ます。  先々を考えると、改悪されることがほとんど。使い切れずに失効する可能性もあるので、長期間ため続けるのはお勧めしません。なるべく早く使うのが賢いやり方だと思います。また、各ポイントは金融サービスとひもづき始めているので、私は最近は投資に回すようにしています。  ―お金の価値が下がるインフレのような現象が起こり得る。ならば早くモノやサービスに変えてしまった方がいいという考え方ですね。  その通りです。また、ポイントがあるから何かを買おうというの使い道以外にも、日々のクレジットカードの支払いに充ててしまう手もあります。今の日本では物価が上がりお金の価値が下がる中、ポイントを使って節約につなげることもできます。
 ―ポイントの勢力争いで今後の注目点は。  現在、モバイルを持っている4者(ポンタ、楽天、dポイント、ペイペイ)と、モバイルのないVポイントという構図になっています。もし、携帯電話の囲い込みなしにVポイントがうまくいけば、同じくモバイルを持たないJR東日本のJREポイントの戦略も成功するのではないかと見ています。JREも勢いを増して共通ポイントに名乗りを上げる可能性があります。  このほか、流通系イオンのWAON(ワオン)ポイントは、MVMOのイオンモバイルとイオン銀行を持っていて共通ポイントに片足突っ込んでおり、無視できない存在です。  ―新Vポイントは、勢力図を塗り替える可能性を秘めていそうですね。  そうですね。各社とも、TとVの統合は意識していると思いますよ。実際、22日の統合に向かってポイントへの世の中の関心が高まる中で、「JRE BANK開始」や「dポイントとアマゾン提携」が発表されました。それぞれ22日よりも前に出したかったのではないでしょうか。  逆に、22日を過ぎれば注目度が下がるので、各社は悪いニュースを出しやすくなるとも言えます。今後はポイントの改悪に警戒が必要になります。


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