口にくわえるだけで一本一本の歯を磨く全自動歯ブラシを開発した、早稲田大発のベンチャー企業「Genics(ジェニックス)」(新宿区)。社長の栄田源(げん)さん(32)が同大大学院の修士1年だった2015年に着想後、研究を続け、今年3月に「g.eN(ジェン)」の商品名で要介護者を対象に発売した。

開発した全自動歯ブラシを手にするGenics社長の栄田源さん=新宿区で

◆スイッチONで最短1分「最低限のきれいを」

 「ロボット技術を生活に役立てたい」と考えた栄田さん。日常的にやりたくない行為の中から歯磨きに着目した。「毎日頑張っても正しい磨き方をしないときれいに保てない。最低限維持できるものを提供できたら」と話す。  上下2本の突起のマウスピースをくわえて電源を入れて使う。7本の小さい歯ブラシが歯列に沿って回転と横移動を繰り返し、内側と外側から歯を1本ずつ磨く。歯ブラシを上下で付け替えるが、30秒ずつ最短1分で磨き終わる。重さは約300グラム。リチウムイオン電池による充電式で動く。  手磨きや電動歯ブラシと異なり、磨きたい部分にブラシを当てる必要はない。くわえるだけだが、歯科で推奨する手磨きと同じ水準の効果を得られるといい、「口の掃除ロボットを目指している」と栄田さん。

◆介護現場で実績 数年後には一般販売へ

 介護施設やリハビリテーション病院、在宅介護などで介助を必要とする人向けに販売しており、既に高齢者や自力で歯を磨けない障害者らが使っている。  今後、付け替える必要がある歯ブラシの一体化やデザインなどの改良をして、数年後に一般消費者向けの発売を目指す。「口腔(こうくう)ケアの意識の底上げにつなげたい」 (畑間香織)


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