「コロナ下での在宅勤務中の間食が開発の出発点」と話す木下さん。アマゾンで売る「inタンサン」の販売は想定の4倍に

森永製菓が6月に通販サイト「アマゾン・ドット・コム」で発売した「inタンサン」が注目を集めている。胃液など酸性の液と混ざるとゼリー状に膨らむ炭酸飲料で、飲むと満足感を得られ、無計画な間食を抑制できるとしている。X(旧ツイッター)で話題を呼び、一時は販売停止するほど注文が殺到した。想定の4倍のスピードで売れている。

「気分転換」と「満足感」の両立めざす

「アイデアを思いついたのは新型コロナウイルス禍で在宅勤務をしていた時」とマーケティング本部の木下洋輔さんは振り返る。仕事中にストレスがたまり、食べたくないポテトチップスを無制限に食べていた。リフレッシュできて、満足感があるものがあったらいいのに、との思いが出発点となった。

同僚にアイデアを相談すると「面白い」と好反応だった。ヒアリングを進めると、仕事のストレスで衝動的な間食をしてしまう悩みは多くの人がもっていることが見えてきた。

レモンとグレープフルーツ味をそろえる

そして気持ちを切り替える際、ちょっとした刺激を感じられる炭酸を好む人が多いことも分かった。そこで、「リフレッシュ」しつつ「満足感」も得られる炭酸飲料の開発に着手した。

飲んだ後の「満足感」には、ゼリー飲料「inゼリー」にも使われる「ゲル化」の技術を応用することにした。低カロリーでもおいしくするために味の改良など試作を重ね、「inタンサン」を開発した。

コンセプト伝わらず、試験販売は振るわず

ただ2023年にコンビニエンスストアでテスト販売したところ、販売実績がふるわなかった。新規性の高い商品ゆえ、店頭で一目見ただけでは商品のコンセプトが伝わらなかったためだ。

しかし、アンケートのユーザー評価は非常に高かった。「考え方は間違っていない」と確信した木下さんは、本格販売は商品の特徴を伝えやすい通販サイトでと決め、男性ユーザーが多く商品のターゲットと一致するアマゾン・ドット・コムを選んだ。発売前にプレスリリースを出し、購入ページやブランドサイトで商品の特徴を動画も使って伝えるなどコンセプトの丁寧な説明に努めた。

すると発売後、inタンサンを試した消費者が「(飲んだだけで)3、4割くらいの満足感がある」とXに投稿。約8万件の「いいね」がついた。関心をもった人が商品ページなどを目にし、コンセプトを理解したうえで購入に至った。

本社に設置した「空腹マネジメントブース」

売れ行きは想定の4倍、一時は販売停止

一時はアマゾンがアクセス過多で販売を停止するほどの売れ行きに。その後も購入者が「やっと届いた」「食事制限に使えそう」といった感想を投稿し、それを見た人がまた商品ページを訪れるといった話題化のサイクルができているという。売れ行きは想定の4倍のペースで推移している。

23年とは全く異なる売れ行きに木下さんは目を丸くする。「やはり商品の伝え方は大事。狙ってバズを生むのは難しいが、チャンスが来たときのための下準備をしっかりしておくのが大切だ」と話す。

仕事中のリフレッシュにと、発売に合わせ本社2階に社員が無料でinタンサンを飲める「空腹マネジメントブース」を設けた。すると90本ほど入る冷蔵庫を1日に2回補充しなければならないほど人気を博した。

木下さんは「飲んでいる社員はリフレッシュ中と分かるので話しかけやすい。inタンサンがコミュニケーションのきっかけになっているのはうれしい」と目を細める。

(荒木玲)

【関連記事】

  • ・パスタソース「パキット」1年で360万食、次はながら食べ
  • ・サラダチキンの次は魚バー タンパク質手軽に
  • ・停滞の豆乳市場、飲まず嫌い防げ キッコーマンが催し

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。