SNSの利用拡大に伴い偽情報の拡散を含む弊害も看過できなくなっている

インターネットを介して偽情報や誤情報が拡散する問題の対策を議論してきた総務省の有識者会議が提言案を公表した。SNSが担う役割は大きくなっており、社会全体で問題を認識して対策を急ぐ必要がある。

提言案では政府やSNSを運営する事業者、利用者などの役割を整理し、それぞれが責務を果たすことを求めた。また、政府に対して事業者に速やかな対策を促す制度の整備を要請した。

SNSを通じた偽情報や誤情報の拡散は2016年の米大統領選で表面化し、民主主義の基盤を弱体化させる懸念が強まっている。国内でも1月の能登半島地震の際に偽の救助要請などが広がり、問題になった。

背景にはSNSの利用が定着したことに加え、一部の事業者が注目を浴びた投稿に対する報酬を増やした事情がある。人工知能(AI)の進化で精巧な偽の画像や動画の生成が容易になり、問題を一段と悪化させかねない情勢だ。

悪影響や被害を減らすためにまず重要なのは、事業者による対策の強化だ。投稿の監視にあたる人員を増やし、利用者からの報告に迅速に対応する体制を整える必要がある。

フェイスブックを運営する米メタは今春、著名人の画像を使った投資詐欺の被害が拡大したことを受け、全社で監視や削除を強化した。取り組みは一定の成果を上げたが、その気になれば可能な対策がなぜ遅れたのか。同社や他の事業者は反省材料とすべきだ。

メタに限らずSNSを運営する事業者の間では偽情報や誤情報への対策で後ろ向きな姿勢が目立っていた。今後もこうした態度を改めないのであれば、欧州のデジタルサービス法のような厳しい罰則規定を伴う法律で規制せざるを得なくなるだろう。

広告費を支払うことでネットサービスの運営を支えている企業の責任も大きい。不正確な情報を放置するSNSへの広告の継続は問題の拡大に間接的に手を貸しているのにも等しく、自らのブランド価値を毀損する恐れもある。

信頼性が高い情報の発信や入手を確実にする仕組み作りも欠かせない。スマートフォンの普及などにより人々と情報とのかかわり方が大きく変わるなか、どのような枠組みが望ましいか。先行する海外の事例なども参考に、社会的な議論を深めたい。

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