世界で54兆円規模といわれる宇宙ビジネス市場への参入を目指す企業が増えている。2040年には3倍近くになると予測される成長産業で、日本政府も2030年代早期までに市場規模8兆円を目指す。都内の異分野や中小企業からの関心も高く、参入を支援するビジネスも広がっている。(砂本紅年)

◆参加企業は1年で14倍、乳製品製造業大手も興味

 5月末に東京・日本橋で開かれた「日比谷宇宙会」。宇宙ビジネスに関する企業の情報交換、マッチングなどを目的に昨夏から5社ほどで始まった。この日は4回目の開催で、大手から中小まで約70社から約100人が集まった。

東京ビッグサイトで4月下旬に開かれた宇宙ビジネスの展示会。多くの企業から出展があった=江東区で

 会場では、中部地方向けに4月に発足した「名古屋宇宙会」の会長で、名古屋大の田中秀孝客員教授が講演。三菱重工業入社後、アメリカ航空宇宙局(NASA)で国際宇宙ステーション(ISS)の設計や運用に携わった経験を踏まえ、民間出身ならではの発想法などについて伝授した。

宇宙ビジネス参入を目指す企業向けの「日比谷宇宙会」。参加した企業担当者らは、宇宙開発の経緯などに関する講義に耳を傾けた=中央区で

 インターネット通信や宇宙旅行など幅広い分野で民間による商業化が進み、市場の拡大が見込まれている宇宙ビジネス。日本での民間参入は始まったばかりで、「まだ参入していないけど興味がある」「どう参入できるか見極めたい」という参加者も多い。参加企業の一つ、雪印メグミルク(新宿区)の担当者は「新規事業の可能性や既存ビジネスに生かせるアイデアがないか探っている」と話した。

◆参入企業支える取り組みもスタート

 会の事務局を担うのは、東北大発の宇宙スタートアップ「エレベーションスペース」。小型人工衛星で企業から依頼された宇宙空間での実験をして、地球にその結果を持ち帰るサービスなどを担う。担当の安井孝太さんはニーズを掘り起こすため「まずは宇宙ビジネス全体を盛り上げることが必要」と話す。「企業間交流が新たなイノベーションや産業の活性化につながれば」と期待し、参入支援事業の一環として会を開いているという。

宇宙ビジネスへの参入企業や教育機関向けに近く発売される動画教材の一部

 エネルギー分野のコンサルティングを手がける「アンプレエナジー」(港区)は近く、宇宙ビジネスに関心のある人や企業、教育機関向けに法制度や資金調達動向、各社のビジネスモデルなどを体系的に解説した動画教材を発売する。  村谷敬(たかし)社長は「宇宙ビジネスは事業規模が大きいが、自社の強みを生かしてスモールスタートを切ることも可能。意欲と気概のある人を育てるナビゲート役になれれば」と力を込めた。 

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