約2300社の3月期決算の上場会社の大半が27日までに定時株主総会を開催した。日経平均株価が最高値圏にあるなか、株主と経営陣が企業価値や事業戦略などに関して真剣な議論をかわした。
総じて会社側が提案した議案は可決され、株主の提案は相次ぎ否決という結果だった。
しかし、業績や株価への不満が会社提案への賛成率の低さや、株主提案の支持の多さに表れていると思われる事例も、少なからずあった。企業は総会で示された様々な株主の声と向き合い、競争力の向上に生かしてほしい。
注目すべきは、経営トップの取締役選任の中身だ。
宝塚歌劇団の俳優死亡への対応に批判が集まった阪急阪神ホールディングスは、角和夫会長の賛成率が57.45%にとどまった。認証不正に揺れるトヨタ自動車の豊田章男会長への賛成率は71.93%と前年から約13ポイント低下。このほか、一般に90%を超えることが多い取締役の賛成率が60%台に低迷する企業もあった。
経営者への評価が厳しくなっている背景には、アクティビスト(物言う株主)が中心となり、経営・財務戦略への批判を強めていることがある。社数ベースで過去最多の株主提案はその象徴だ。
業績が低迷するダイドーリミテッドの総会では、アクティビストが提案した6人の取締役候補のうち3人が選任された。
伝統的な資産運用会社や個人が会社への批判を表明するため、トップの選任反対や、アクティビスト提案の支持に動く傾向は強まっている。企業どうしの関係強化を意図する政策保有株式が減った今、往年の「物言わぬ株主」は消えつつあるとみるべきだ。
企業が業績や株価の面で高い水準を求められる傾向が、後戻りすることはないだろう。昨年来、東京証券取引所は「資本コストや株価を意識した経営」を働きかけている。ニッセイアセットマネジメントは「PBR(株価純資産倍率)1倍割れ」などへの対応を、議決権行使基準に加えた。
企業は社外取締役や女性役員の採用など形式を整えるだけでは、株主から十分な支持は得られない。求められているのは、業績や株価などの結果だ。
経営者は株主提案や総会議場で寄せられた個人の声を、競争力を磨き、企業価値を高めるための力とすべきである。
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