記者会見するJR東海の丹羽社長(14日、千代田区)

JR東海の丹羽俊介社長は14日の記者会見で、リニア中央新幹線の東京(品川)―大阪間の全線開業を巡り「工事契約の締結から既に6年半以上が経過している静岡工区の状況を踏まえると、名古屋―大阪間の工事スケジュールにもおのずと影響が生じる可能性がある」と話した。

リニアは当初2045年に全線開業する目標だったが、JR東海が低金利の財政投融資を活用して「最大8年の前倒しをめざす」とした経緯がある。単純計算をすれば最短で37年になる。ただ、同社が3月に東京・品川―名古屋間の27年開業目標を事実上断念したことで、全線開業の工事にも遅れが生じるとの懸念が出ていた。

岸田文雄首相は7日、リニア沿線自治体と面会した際、全線開業について「現行の想定時期のもと、整備が適切に進むように必要な指導と技術的支援を行っていく」と話し、最短37年の開業時期を堅持するよう求めた。

早期の全線開業のため東京―名古屋間、名古屋―大阪間を並行して工事する可能性も問われた。丹羽社長は「名古屋の開業以前に大阪までの工事に着手することは財務面や工事の遂行能力などを踏まえると不可能だ。名古屋までの工事にまずは全力を尽くす。そのことが大阪までの早期の開業につながる」と強調した。

静岡県との協議についても言及した。

JR東海と静岡県、国土交通省の3者の幹部が12日、工事の着工に必要な河川法や県の条例に基づく行政手続きを協議した。川勝平太前知事は県が指摘する課題の解決を優先したが、県は現在、水や環境保全の議論と行政手続きの確認を並行して進める方針だ。

丹羽社長は「工事着手に必要な手続きは3者協議で進めていきたい」と意欲を示した。現場実務者レベルの協議も「従前と比べて最近、かなり高い頻度になっている」と語った。

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