記者会見するENEOSHDの宮田社長は株主還元の強化を強調(14日、東京都千代田区)

ENEOSホールディングス(HD)は14日、2025年3月期に最大で2000億円超の自社株買いを実施すると発表した。同社では過去最大の規模となる。買い付ける上限は6億8000万株で、発行済み株式(自社株を除く)の22.68%にあたる。石油製品の利幅が堅調で業績が改善しており、株主還元を手厚くし資本効率も高める。

同社は2月に上限500億円の自社株買いを発表済みで、すでに335億円を取得している。今回の自社株買いは総額2500億円から、2月に決めた条件で実施した金額を差し引いた範囲となる。取得期間は5月16日から25年3月31日まで。

純利益に占める配当と自社株買いの比率「総還元性向」(備蓄石油の在庫評価損益を除く)は24年3月期と25年3月期平均で85%になる。26年3月期まで3年間の中期経営計画で総還元性向50%以上をめざしている。宮田知秀社長は14日の記者会見で「自己資本利益率(ROE)を改善し、中長期的な企業価値の最大化を実現する」と話した。

同日発表した24年3月期の連結決算(国際会計基準)は純利益が前の期比2倍の2881億円だった。ガソリンや軽油など石油製品の利幅が1リットルあたり3円ほど広がり、利益を押し上げた。14日の株式市場で決算や株主還元策を取引時間中に発表したENEOSHD株は一時前日比15%高の820円となった。終値は11%高の790.8円だった。

石油元売り業界では企業再編や製油所の能力削減が進み、石油の需給が引き締まった。国際的な原油価格も底堅く推移しており、原油価格と製品価格の差である利幅を確保しやすくなっている。新型コロナウイルス禍による需要減が回復し、航空会社向けのジェット燃料の販売も好調だった。

元売り2位の出光興産も14日、25年3月期に最大700億円の自社株買いをすると発表した。発行済み株式(自社株除く)の6.5%にあたる9000万株を上限に買い付ける。取得期間は5月15日から25年3月14日。 

出光の24年3月期の純利益は前の期比10%減の2285億円だった。石炭価格下落によりオーストラリアで権益を持つ鉱山の利益が減った。前の期はロシアによるウクライナ侵略で資源価格が高騰していた。石炭事業だけで約1000億円の減益要因となった。

すでに決算を発表したコスモエネルギーホールディングスも最大230億円の自社株買いを実施するとしている。

25年3月期は3社全てが減益を見込む。ENEOSは原油価格を保守的に見積もり石油の在庫評価益の減少を想定する。出光は石炭権益の開発規模を減らしており権益からの利益が縮小することが響く。

各社は需要が縮む石油に代わる脱炭素時代の燃料の開発も急ぐ。既存の製油所で稼いだ資金を水素や合成燃料、再生航空燃料(SAF)などの事業化に投資する。足元の業績は堅調だが、成長投資もかさむなか株主還元も含めた資金配分の難しさが増す。

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