三越伊勢丹HDは30年度以降に旗艦店の伊勢丹新宿本店(東京都新宿区)などの周辺を合わせて不動産開発に5000億円規模を投じる

三越伊勢丹ホールディングス(HD)は2030年度以降、伊勢丹新宿本店(東京・新宿)など旗艦百貨店周辺の街づくりに向けた不動産開発へ5000億円規模を投資する方針を14日明らかにした。30年度ごろから最長で15年程度かけて投資を進める。地区の再開発に合わせて、保有する土地や建物をより有効活用し長期的な収益力を高める。

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同日発表した26年3月期から31年3月期までを対象とする中期経営計画の関連項目として、投資方針を明らかにした。同社は百貨店と周辺の不動産を活用し、商業施設やホテル、オフィスなど複合型の再開発事業を計画している。31年3月期をめどに伊勢丹新宿本店を中心に順次着工するとみられる。三越日本橋本店(東京・中央)の周辺開発も検討中だ。

5000億円規模の不動産開発投資で、本業の百貨店事業で売上高1000億円規模の押し上げ効果が見込めるとしている。不動産事業による収益やテナント賃料収入のほか、子会社が建装や情報システムなども手掛けることで営業利益などで年200億円以上を底上げするともはじいた。

三越日本橋本店(東京都中央区)のある日本橋地区では再開発が相次ぐ

伊勢丹新宿本店は1933年に現在の本館が開業した。一方、三越日本橋本店は増改築工事を経て35年にほぼ現在の形になった。同店の建物は国の重要文化財に指定されている。日本橋は首都高速道路の地下化工事などの再開発が相次いでおり、新宿も新宿駅西口で大規模な再開発が始まっており、三越伊勢丹も活性化に乗り出す。

同日開いた決算発表の記者会見で、細谷敏幸社長は「(東京・新宿の)本社ビルや駐車場などの上空はもったいない部分がある。(開発で)まちづくりにもつなげていきたい」と話した。

31年3月期までの中計では、28年3月期の営業利益を25年3月期の計画に比べて25%増の800億円、31年3月期には56%増の1000億円規模にするとした。百貨店を軸に収益を拡大し、自己資本利益率(ROE)も足元の8%台から10%の水準に高める。

三越伊勢丹HDは同日、25年3月期の連結営業利益が前期比18%増の640億円になりそうだと発表した。過去最高を2年連続で更新する。円安基調を追い風にインバウンド(訪日外国人)売上高の拡大が続く見通しだ。

国内百貨店の既存店売上高は5%増となる1兆1242億円の計画だ。首都圏の基幹3店や岩田屋三越(福岡市)がけん引する。伊勢丹新宿本店の総額売上高は9%増の4110億円と2年連続の最高額となる。ブランド品や時計、宝飾品といった高額品の活発な消費が続く。

国内百貨店の免税売上高は44%増の1563億円と前期の過去最高をさらに上積みする。足元で中国本土の客数が新型コロナウイルス禍前を割り込むが、アジアの他国・地域客の売上高が拡大する。人件費や地代家賃など販管費の伸びを抑え、売上高営業利益率は11.7%と1.5ポイント改善する。

細谷社長は「高額品の継続的な値上げが購買の背中を押している。4〜5月も訪日客だけでなく国内客の消費も堅調に動いている」と述べた。

純利益は5%減の530億円を見込む。前期に繰り延べ税金資産を計上した反動が出る。

好調な業績を反映し株主還元も拡大する。年間配当は10円増の44円とした。10月末までに最大150億円で上限850万株の自社株買いも実施し、11月に取得した全株式を消却する予定だ。

24年3月期の純利益は72%増の555億円だった。営業利益、経常利益は08年の経営統合後で最高だった。年間配当は20円増の34円とし従来予想から2円引き上げた。

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