違法に捕獲された野鳥を飼育・販売したとして警視庁生活環境課は8日、鳥獣保護法違反(飼養、販売の禁止)の疑いで、福島県いわき市の小鳥店経営、塚本二治男(ふじお)(78)と、妻のとし子(73)の両容疑者を逮捕したと発表した。店の常連客が密猟した野鳥を買い取り、店内の隠し部屋で飼っていた。

押収された野鳥の「マヒワ」=8日、警視庁亀有署で

 調べにいずれも容疑を認め、二治男容疑者は「年間100羽を売ったこともあり、東北一番の小鳥店だと自負している」などと供述。1羽1500~8000円程度で販売していたという。  逮捕容疑では、2022年12月上旬と23年1月下旬、経営する店で東京都葛飾区の会社役員男性(77)に、違法に捕獲されたウグイスなど3種11羽を計3万3000円で販売。同10月21日には店内でヒガラやオオルリなど7種32羽を飼育していたとされる。

◆店の奥に二重扉で隠した部屋

 野鳥の捕獲や飼育、譲渡などは原則、禁止されている。同課によると両容疑者は、店頭で合法のペット用の小鳥を販売する一方、店の奥に二重扉で隠した部屋を設け、野鳥を密売していた。  また同課は8日、同法違反などの疑いで、この会社役員男性を含む店の客ら75~78歳の男女5人を書類送検した。いずれも容疑を認めている。一連の事件で、同課は店や客などから計20種90羽の野鳥(特定外来生物のガビチョウ2羽含む)を押収した。   ◇  ◇

◆10日から愛鳥週間「密猟110番の周知を」

店や客らから押収したオオルリやヤマガラなどの野鳥=8日、警視庁亀有署で

 野鳥の捕獲や飼育を巡る法令違反件数は近年減りつつあるものの、水面下で違反を続けているケースは一定数あるとみられる。10日〜16日の「愛鳥週間」を前に、関係者は野鳥保護の重要性を呼びかけている。  警察庁によると、2023年に鳥獣保護法違反で検挙した件数は全国158件(21年比21件減)で、うち飼育や販売を禁止する27条の違反が91件(同25件減)、捕獲を禁ずる8条の違反が49件(同9件減)だった。環境省の統計でも、法令違反は減少傾向にある。  日本野鳥の会の葉山政治常務理事は、違反の減少について「各都道府県が12年、環境省の基本指針を踏まえて愛玩目的の捕獲を禁じたのがきっかけになった」と分析する。  ただ、市民からの通報も大きな役割を果たすため、違反情報を警察や行政に取り次ぐ「密猟110番」の一層の周知が必要だと指摘。警察や行政が情報を把握しても厳重注意で終わるケースが多いことから、「厳正に取り締まっていくことが課題」という。  また渡り鳥が持ち込む鳥インフルエンザウイルスなどを例に挙げ、「野生動物と人間の適正な距離を保つことが、人や動物への新たな感染症の発生を防ぐことにもなる。あくまで野鳥は野外でめでてほしい」と訴えた。 (小倉貞俊)

 愛鳥週間 野鳥の保護を呼びかける目的で日本鳥類保護連盟が1950(昭和25)年に定めた、毎年5月10日~16日の1週間。連盟と環境省との共催で「全国野鳥保護のつどい」が開かれ、野生生物の保護に功績のあった個人や学校、団体が表彰されている。



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