川勝平太知事の辞職に伴う静岡県知事選は9日、告示される。26日投開票。論戦の最大のテーマになるのが、リニア中央新幹線静岡工区の着工への是非だ。自民党推薦、立憲民主党など野党系推薦のいずれの立候補予定者も「推進」の立場で、共産党公認の立候補予定者は「反対」を掲げる。結果次第ではリニア計画が急進展する観測もあるものの、課題は残ったままだ。(塚田真裕)

リニア中央新幹線の試験車=山梨県都留市の実験センターで(資料写真)

◆大井川の水問題を理由に着工認めず

 大井川上流の南アルプスにトンネルを通す静岡工区工事では、中流や下流の水量減少の恐れが指摘され、川勝知事は着工を認めない理由にしてきた。  知事選の主な立候補予定者のうち、自民推薦の元副知事大村慎一さん(60)は「1年以内に結果を出す」、立憲民主、国民民主両党などの野党系が推薦した元浜松市長鈴木康友さん(66)は「課題があるからやらないのではなく解決する」と語り、いずれもリニア推進を打ち出す。  共産から出馬する党県委員長の森大介さん(55)は「リニアは大量の電力を消費し、気候危機打開に取り組む流れに逆行する」と計画自体に反対だ。

◆前回の知事選でも争点に

 大井川の水問題は前回2021年の知事選に大きく影響した。川勝知事は「命の水を守る」と繰り返し訴え、自民推薦候補との一騎打ちで圧勝し4選した。「強引に事業を進めようとする国やJR東海に待ったをかけるヒーローの構図」(自民県議)の演出により、県民の共感を得たことが要因だ。

リニア中央新幹線静岡工区の工事予定地周辺

 ただ、4選を決めてから半年後。大井川の実測データなどを精査した国の有識者会議は、JR東海が水問題対策を約束通り実施すれば、水を利用する中下流域への影響は「極めて低い」と評価した。  川勝知事は納得せず、議論は膠着(こうちゃく)状態に。大井川流域市町の首長からは「流域の代弁者ではない」との声が公然と上がった。  大村、鈴木両氏は川勝県政を「対立と分断、停滞を招いた」と批判しつつ、リニア問題を巡っては開通のメリットを強調する。

◆経済効果は10年で1679億円

 国土交通省は昨年10月、リニアが全線開業すれば、東海道新幹線の静岡県内停車頻度が現状の約1.5倍になるとの調査結果を公表。この利便性向上で来県者が増えることで、国は、県への経済波及効果は10年間で1679億円に上ると試算する。  だが、課題は水問題にとどまらない。東京ドーム3杯分に当たる370万立方メートルの建設発生土置き場や、南アルプスの生態系をどう保全するかなどの問題もあある。県幹部は「誰が知事になっても、課題は変わらない」と見通す。  知事選にはほかに、アパート経営の村上猛さん(73)、コンサルティング会社社長の浜中都己(さとみ)さん(62)がいずれも無所属で出馬表明し、政治団体「個人の尊厳党」代表の横山正文さん(56)も立候補を予定している。 

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。