警視庁は警察官を名乗る詐欺についても注意を促す

オレオレ詐欺など特殊詐欺の脅威が再び増している。2024年の被害額が11月末時点で約581億2千万円(暫定値)にのぼり、10年ぶりに過去最悪となったことが警察庁のまとめでわかった。警察官を装って信用させる手口のほか、振込額の上限を高く設定できるインターネットバンキングの普及で1件当たりの被害額が大きくなったことが一因とみられる。

警察庁が23日に公表した24年11月末時点の被害状況では、特殊詐欺全体の認知件数は1万8606件で、前年同期比7.8%増だった。手口別ではオレオレ詐欺が5566件(同55.7%増)で最も多く、パソコンのサポート詐欺などの架空料金請求詐欺の4868件(同3.3%増)が続いた。

特殊詐欺の年間被害額は14年の約565億5千万円が最多だった。国による高齢者らを対象にした注意喚起に加えて、金融機関もATMの引き出し額や振込額に制限を設けるなど社会全体で被害抑止策を進めてきたこともあり、同年をピークに減少傾向にあったが22年から再び増加に転じた。

今年の被害状況を手口別にみて顕著だったのがオレオレ詐欺だ。約342億7千万円と全体の6割近くを占め、前年同期比約3倍に増えた。目立つのが警察官をかたって電話をかけて「あなたの口座が犯罪に使われている」などと資産保護や口座凍結名目で金をだまし取る手口だ。

警視庁によると、警察官を名乗って携帯電話に架電した上でSNSやビデオ通話でのやりとりに誘導する。警察官をかたる人物が警察手帳や逮捕状をかざし信頼させようとするケースもあるという。

同庁が9月までに詐欺容疑で逮捕した台湾国籍の男女3人は、警察官を装って京都市の70代男性に電話をかけ「逮捕状が出ている。疑いを晴らすために金を買ってほしい」とかたり金地金9本(当時約1億1500万円相当)をだましとった。

ネットバンクの普及も被害額が増えた一因とみられる。ネットバンクでは1日あたりの振り込み上限金額が1000万円と高額な銀行もあり、1件あたりの被害額が大きくなりやすい。高齢者の間でも利便性の高いネットバンクは一定程度普及した。

同庁は「警察官がSNSやビデオ通話で連絡を取ることはない。警察を名乗る電話があったら所属などを確認して最寄りの警察署に連絡してほしい」としている。

被害抑止に向けては、特殊詐欺の主体となる犯罪グループの摘発も重要になる。

組織犯罪においては近年SNS上で実行役を募る「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」による活動が台頭している。「闇バイト」では受け子やかけ子といった詐欺の実行役を募る動きが広がる。秘匿性の高い通信アプリを悪用し、警察の捜査が及びにくい海外に拠点を設けるグループも相次ぐ。

警察庁が24日に開いたトクリュウの捜査を担う各都道府県警の幹部を集めた会議では、露木康浩長官が特殊詐欺やSNS型投資詐欺、凶悪な強盗事件といった各種犯罪にトクリュウが深く関与していると言及した。

露木長官は「治安対策上の最大の脅威の一つで、国民の体感治安に大きく影響を及ぼす要因となっている」と強調し、力を注ぐ対象事犯の選定や中心人物への戦略的な取り締まりを推進するよう指示した。

(内藤怜央)

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