2023年度に公立小中高校と特別支援学校で精神疾患により休職した教員が7119人だったことが20日、文部科学省の人事行政状況調査でわかった。3年連続で過去最多を更新し、5年前の1.3倍に増えた。若年層ほど割合が高く、ベテラン教員の退職が進む中、授業や指導について悩む若手教員らへ支援の拡充が課題となっている。

精神疾患で休む教員、20代が最多

文科省の調査によると、23年度に精神疾患で休職したり、1カ月以上の病気休暇を取得したりした教員は前年度比848人の1万3045人に上り、教員全体の1.42%を占めた。年代ごとの割合をみると、20代は2.11%、30代は1.66%と若い世代ほど高かった。病気休職者全体は9408人で、教員の1.02%だった。

精神疾患による休職の要因について各教委に上位2つまでたずねたところ、「児童生徒に対する指導そのものに関すること」が26.5%で最も多かった。「職場の対人関係」(23.6%)、「校務分掌や調査対応など事務的な業務に関すること」(13.2%)が続いた。

年代別にみると、20代と30代では「児童生徒に対する指導そのものに関すること」がそれぞれ34.1%、27.7%と最も多く、40代では「職場の対人関係」が23.9%で最多だった。地域住民や保護者など「職場外の者との対人関係」は40代で10.0%で、ほかの年代を大きく上回った。

小中学生の不登校が過去最多の34万人に上り、いじめの認知件数も増加するなど、教員が抱える業務の負担は重くなっている。長時間労働が問題となっていることなどから、採用試験の志願倍率も低下。東京都内の小学校に勤めるある中堅教員は「指導力が足りず、悩む若手教員も増えているのではないか」と話す。

「中間テストができない」「授業の一部が自習に」

教員人気の低迷に加え、「心の病」などで休む教員も増加し、学校現場への影響は広がっている。

埼玉県吉川市のある市立中では今年度、英語の教員が欠員した影響で、1つの学年で中間テストが実施できなかったり、2週間ほど授業の一部を自習としたりする対応を迫られた。

非常勤の教員2人を補充して現在は授業を通常通り進めているが、同市教育委員会には「テストが受けられず心配だ」などと不安の声が寄せられた。この中学校では音楽の教員も一時欠員し、近隣の学校の先生に来てもらうといった対応を迫られたという。

同市内の小中学校12校では12月中旬時点で計7人の欠員が続いている。4月時点では定数を満たしていたが、教員の出産や育児、病気や退職が重なった。

全国公立学校教頭会の調査によると、全国の公立小中学校の約2割で23年度に教員の欠員が発生した。12%の小中学校は年度当初から教員が欠けている状態で、24年度当初も21%で欠員があった。

副校長や教頭が担任の業務や授業の一部を代わりに担った学校もあるという。

ベテラン大量退職で若手に不安 サポート役を新設へ

精神疾患で休む若手職員が多いことについて、同省の担当者は「大量採用時代のベテランが退職を迎えて若い教員が増える中、授業や生徒指導で悩むことが多いのではないか。ストレスチェックなど教員全体の対策に加え、年代別にもきめ細かな対策を進めていきたい」と話す。

文科省の学校教員統計調査によると、公立小中学校の教員の平均年齢は10年度ごろから低下しており、22年度は小学で42.1歳、中学で43.0歳だった。

世代交代を背景に若手を支える人材が不足する中、同省は教員定数を改善して新任教員が担当する授業数を減らすほか、26年度から若手のサポートなどにあたる中堅向けのポストを新設するなど、支援の充実を目指す。

東京大の小川正人名誉教授(教育行政学)は「学校現場が直面する課題は複雑化しており、教員同士がコミュニケーションをよくとりながら、組織的に取り組める環境づくりが求められている」と指摘する。

そのうえで「保健師やカウンセラーが学校を巡回して相談に応じるなど、専門人材を活用したアウトリーチ型の支援体制を各教育委員会が整備することも必要だ」としている。

(斎藤さやか)

性暴力などで処分・訓告、4800人に増加

文部科学省の人事行政状況調査によると、不適切指導や性暴力などで2023年度に懲戒処分や訓告を受けたのは4829人で、22年度から257人増えた。理由は「交通違反・交通事故」が2302人、「不適切指導」が509人だった。

「性犯罪・性暴力など」は79人増の320人で過去最多。このうち、児童生徒に対する性犯罪などで懲戒処分を受けたのは157人だった。「体罰」は343人で22年度から54人減った。

24年4月時点で校長や教頭など管理職に占める女性の割合は24.9%(1万6658人)で、過去最高となった。23年度から724人増えた。

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