岐阜大の研究者と測量会社の技師を兼業していた愛知県の男性(当時60)が自殺したのは2つの職場での心理的な負担が重なったのが原因だとして、名古屋北労働基準監督署が負担を総合的に判断し、労災認定していたことが16日、関係者への取材で分かった。2020年改正の労災保険法で複数の勤務先での労働時間や心理的な負担を合算して総合判断できるようになり、過労自殺への初適用例とみられる。

代理人弁護士によると、男性は19年12月ごろから、岐阜大の研究員と航空測量会社「パスコ」(東京)の技師を兼業し、精神障害を発症して21年5月に自ら命を絶った。

岐阜大では准教授からパワハラを受け、パスコでは橋梁調査の業務全般を1人で担当するなどしていたという。労基署はそれぞれの職場での心理的負荷は「中」だったが、総合的には「強」に当たると判断。「複数業務を要因とする災害」として、今年4月に労災認定した。

厚労省によると、総合評価による労災認定は23年度までに17件あった。うち4件が死亡事案で、いずれも脳や心臓の疾患によるものだった。

代理人の立野嘉英弁護士(大阪弁護士会)は「複数の職場から生じるストレスの蓄積について、どのように健康管理することができるか議論を進める必要がある」としている。

パスコは「謹んでお悔やみ申し上げる。労基署から直接的な指導はなく、詳細は確認中だ」とし、個人情報保護などを踏まえ回答を控えるとしている。岐阜大は「適切に対応しており、労基署から指導を受けていない。詳細は個人情報保護の観点から控える」とコメントしている。

男性の30代の長女は「努力する人が穏やかに仕事にまい進できる会社になってほしい」、20代の長男は岐阜大について「教育機関として立場が弱い教職員の環境改善を望む」とそれぞれ話している。〔共同〕

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