全国有数の長ネギの産地、埼玉県深谷市で埼玉工業大が特産「深谷ネギ」の葉を植物由来のバイオプラスチックに加工し、箸置きを作るユニークな取り組みを進めている。出荷時の規格に合わせるため、切り捨てられるネギの葉は同市で年間約6千トンに上り、農家を悩ませてきた。技術開発した本郷照久教授は「もったいない精神で資源を有効活用し、今後は箸置き以外にも挑戦したい」と語る。(共同通信=待山祥平)
開発のきっかけは、市の農家関係者からの相談だった。長ネギは出荷時に1本当たり55~60センチと規格が決まっており、農家は収穫したネギから30センチほど余った葉の部分を切り、畑の脇に捨てていた。やがて腐ると硫黄のような悪臭を放つのが悩みの種で、市担当者も「においの苦情はたびたびあり、対応に困っていた」と話す。
環境汚染問題などを研究する本郷さんは「ネギの葉をバイオプラにできないか」と試行錯誤。2022年秋、葉を加熱し、ろ過して「セルロース」と呼ばれる繊維を抽出する技術を確立した。廃棄物を再資源化する大阪府の企業と連携し、セルロースを主成分とする粒状の素材「ペレット」を生み出すことに成功。2024年7月、ペレットを使い深谷ネギの形や緑、白の色合いを表現した箸置きが完成した。今後は商品として販売する予定だ。
市のネギ農家馬場茂さんは「全国の農家が抱える、においの問題解決につながる」と笑顔。加工技術は他の農作物にも応用できるといい、本郷さんは「無駄なものも発想の転換で活用できる。収益化し、農家に少しでも還元できれば」と意気込んだ。
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