臓器提供数の増加に対応できず移植に至らないケースを防ぐため、厚生労働省は5日、移植医療体制の改革案を有識者委員会で取りまとめた。脳死や心停止後の移植臓器をあっせんする日本臓器移植ネットワークの業務を分割し、あっせん機関を複数化することや、移植希望者が手術を受ける病院を複数登録できるようにすることが柱。移植ネットや一部の移植実施病院に集中していた業務を軽減することで、移植増につなげる狙い。

移植ネットは心臓や肺などをあっせんする国内唯一の機関として、提供者(ドナー)となる可能性がある患者の家族への情報提供や同意取得、移植を受ける患者の選定、臓器搬送の調整など一連の業務を担ってきた。しかし近年提供数が増加し、業務が多忙化。人員不足で対応の遅れが指摘されていた。

改革案では、地域ごとに新たな法人を設置。ドナー家族への説明や臓器摘出手術の進行など、ドナー側の業務を移植ネットから移行する。移植ネットは移植を受ける患者の選定や臓器搬送の調整などの業務に専念する。

移植希望者が登録可能な移植病院は原則1カ所だが、第2希望まで登録できるようにして病院側の事情で手術ができないケースを減らす。本年度中にシステムを整備する。登録の判断材料として、病院ごとの移植実施数や待機患者数も公表する。

また、臓器提供の経験が豊富な拠点病院を拡充し、経験が浅い病院に人材を派遣するなど支援する仕組みも整える。

5日の会合では委員から、新法人の役割や業務管理に関する詳しい検討を求める意見や、移植を受ける患者の選択肢を広げるために各病院の移植成績の公表も必要だとする意見が出た。〔共同〕

▼臓器移植 病気や事故で臓器の機能が低下し、移植でしか治らない患者に他人の臓器を移植し、回復させる医療。1997年施行の臓器移植法で脳死と判定された人からの臓器提供も可能になった。提供には本人の書面による意思表示が必要で、15歳以上の意思表示が有効とされた。2010年の改正法施行で、本人の意思が不明でも、家族の承諾で提供できるようになり、15歳未満の提供も可能になった。脳死での提供数は増加傾向で、23年は過去最多の約130件だった。〔共同〕

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