◆杖ついてやっと着いたら「受け付けできません」
【87歳女性 東京都府中市】 市の広報紙に、家の近くの文化センターで「マイナ保険証の利用登録ができます」と案内があったので出かけていきました。 夏の暑い中、杖(つえ)をつきながら向かいました。順番待ちで並んでやっと受け付けにたどり着いたのですが、「受け付けできません。市役所へ直接出向いてください」とのことでした。 私のマイナンバーカードは、2025年6月まで有効でしたが、電子証明書が2020年6月で期限切れでした。 市の広報では、カードの期限切れについて説明がありませんでした。 私の家は、市のはずれのため、市役所まで遠く、なかなか出かけられません。 親族の代理でも委任状があれば手続き可能のようですが、マイナ保険証については、それぞれの考えがあり、お願いしにくいです。◆保険証は弱っている人が使うもの、自動更新を
【ペンネーム:武田奈緒さん 64歳 会社員 東京都千代田区】 この国が誇る国民皆保険制度を支えてきた健康保険証は、国民の命綱のようなものです。運転免許証など他のものとは違います。 自動的に更新されることによって、認知に問題があっても、体が不自由でも、無保険期間の発生を心配することなく、すべての国民が医療を受けることができたのです。 それをいきなり保険証を取り上げると脅して、任意のマイナカードを強制することは法的にも倫理的にも許されません。 さらに一方的に廃止を宣言してから2年しかないというのはあまりにも乱暴です。 私には高齢の母がいます。 マイナ保険証の暗証番号を覚えてリーダーを操作することは無理です。 用途が保険証のみであれば、付き添いの人などに暗証番号を託すことも考えられますが、財産の情報などあらゆる情報が紐づけられるのであれば、リスク管理上それはできません。なので、資格確認書の交付を受けるつもりですが、これもこの先どうなるのかわからず不安です。 高齢者施設などでの混乱や負担増は容易に想像できます。 利用者家族からしても、施設がマイナ保険証や暗証番号を預かれないとなれば、受診のたびに遠方からでもマイナ保険証を持って付き添いをしなければならなくなります。預ければ預けたで、財産の情報まで紐づけされていれば悪用の心配を常にしなければなりません。 暗証番号なしのマイナ保険証ができましたが、これも更新手続きは必要です。 高齢者、障害者などにとって更新手続きに出向く(あるいは代理人を手配する)ことがどれほど大変なことか政府は分かっていません。 そもそも皆保険制度の下、本人申請は不要で当然なはずです。 また、暗証番号を登録していなくても、情報が紐づけられていることに変わりはないので、マイナ保険証を持ち歩く高齢者たちは犯罪集団の恰好(かっこう)のターゲットになるのではないでしょうか。 マイナカードはどう考えても再設計が必要です。 少なくとも保険証機能は切り離すことが必須です。 政府は二言目には他の国はデジタル化が進んでいると言いますが、1枚のカードに保険証から免許証から財産情報まで集約して、落としたり盗まれたりしたら一巻の終わりなどという国はありません。最近のサイバー攻撃技術高度化のニュースを見ていても不安しかありません。 保険証はそもそも弱っている人が使うのだということを認識してもらいたいです。 自動更新は絶対条件ですし、紛失した場合、財産にまで影響が出るような形は絶対避けなければならないと思います。【取材班から】
マイナンバーカードには2つの有効期限があり、更新手続きが必要です。 一つはカード自体の有効期限で、発行日から10回目の誕生日です。もう一つは、カードの電子証明書の有効期限で、発行日から5回目の誕生日です。 マイナンバーカードには、カードの持ち主が本人であることなどを示す電子証明書がICチップに内蔵されています。期限が切れるとマイナ保険証として使えなくなります。 有効期限が近づくと、更新を知らせる通知が届きます。マイナンバーカードを持って居住する市区町村の窓口で更新手続きを行ってください。 マイナンバーカードに2つの有効期限があることを知らなかったという人は、府中市の女性だけに限りません。 取材をしていると、デジタルに不慣れな人ほど、必要な情報にたどりつけないケースが目立ちます。 国や自治体には、利用者に寄り寄った丁寧な説明が求められています。記事に『リアクション』ができます。ご利用には会員登録が必要です。
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