目次
-
各派閥の残った資金の処理は?
-
自民旧主要5派閥の去年のパーティー収入
政治資金規正法には、解散した政治団体の資金や資産の取り扱いに関する規定はありません。
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題を受けて、麻生派を除く派閥や議員グループが相次いで解散を決めたことから、NHKは、総務省が29日およそ3000の政治団体の去年1年分の政治資金収支報告書とともに公表した、ことしの解散団体の収支報告書を調べました。
その結果、4月に解散した旧森山派「近未来政治研究会」と、9月に解散した旧岸田派「宏池政策研究会」、旧石破派「水月会」、旧谷垣グループの「有隣会」は、一部を事務所費や光熱水費などの経常経費や飲食代などの組織活動費として支出し、残った資金あわせて1億5000万円余りを解散の半月ほど前から当日にかけて党本部や所属議員の政治団体に寄付し、いずれも残金が0円となっていました。
あわせて6億8600万円余りをことしに繰り越している旧安倍派と旧二階派、それに旧茂木派の政治団体は、いずれもまだ解散していません。
政治資金の問題に詳しい日本大学の岩井奉信名誉教授は、「派閥の資金は派閥自身が集めたものなので、その処理方法は派閥が決めることになるが、あれだけ大きな問題を起こしたので、派閥解散時の資金の処理は有権者が納得するようなものにする必要があるが、一時議論になっていた被災地への寄付は公職選挙法の問題が出るので、党への寄付や政治家への配分というのはやむをえない処理だろう」と話しています。
そのうえで、「自民党の派閥の中には、解散を表明したものの政治団体としてはまだ解散していないものもあり、明朗な処理が求められる。政治団体の解散に伴って不明朗な処理が行われたこともあったので、解散する政治団体の残金の処理のあり方についてきちんと法律で定めるべきだ」と指摘しました。
各派閥の残った資金の処理は?
政治資金規正法は、政治団体が解散した場合、国会議員関係政治団体は60日以内に、派閥などそれ以外の団体は30日以内に、収支報告書を提出しなければならないと定めています。
【旧岸田派】
収入総額が前の年からの繰越額をあわせて1億4724万円余りだった旧岸田派は、42%にあたる6236万円余りを事務所費や人件費などの経常経費として、77万円余りを組織活動費として、2万円余りをその他の経費として支出し、残った8408万円余りを解散当日に自民党本部に寄付していました。
【旧森山派】
収入総額が繰越金をあわせて5470万円余りだった旧森山派は、4%にあたる233万円余りを事務所費や光熱水費などの経常経費として、75万円余りを食事代などの組織活動費として支出し、残った資金は、解散の2日前に、所属議員7人の政治団体にそれぞれ500万円ずつ、派閥の会長だった森山幹事長の政治団体に1661万円余り寄付していました。
【旧谷垣グループ】
収入総額が繰越金をあわせて1257万円余りだった旧谷垣グループは、53%にあたる675万円余りを事務所費や人件費などの経常経費として、79万円余りを飲食代などの組織活動費として支出し、解散の13日前に残った502万円余りを所属国会議員など20人の政治団体にほぼ均等に寄付していました。
【旧石破派】
収入総額が繰越金をあわせて1042万円余りだった旧石破派は、組織活動費として58万円余りを、その他の経費として9万円余りを支出し、解散の4日前に残った975万円余りを自民党本部に寄付していました。
自民旧主要5派閥の去年のパーティー収入
総務省が29日公表した政治資金収支報告書から、自民党の各派閥が去年開催した政治資金パーティーの収入なども明らかになりました。
【旧安倍派】
パーティー収入のキックバックなどをめぐる政治資金規正法違反事件で立件された3つの派閥のうち、虚偽記載の額が最も大きかった旧安倍派「清和政策研究会」は、去年は、5月に1回政治資金パーティーを開催し、前の年の訂正前の収入より1億1512万円余り多い2億992万円余りの収入があったと記載しています。パーティー券の購入者は3225人と、前の年の訂正前の収支報告書に書かれた数とほぼ同じでしたが、20万円以下の「匿名の購入者」の平均購入額は5万8255円とおよそ2.5倍に増えていました。
【旧二階派】
立件額が2番目に大きかった旧二階派「志帥会」は、(しすいかい)4月に1回政治資金パーティーを開催し、2億5743万円の収入があったと記載しています。前の年の訂正前の収入より6897万円余り増えていますが、パーティー券の購入者数は「不明」とされ実態がわからなくなっていました。
【旧岸田派】
立件額が3番目だった旧岸田派「宏池政策研究会」は、5月に1回政治資金パーティーを開催し、1億8097万円余りの収入があったと記載しています。
収入額は前の年とほぼ同規模ですが、パーティー券の購入者は3430人と、前の年の1.2倍に増えていました。
【旧茂木派】
旧茂木派「平成研究会」は、5月に1回政治資金パーティーを開催し、1億7772万円余りの収入があったと記載しています。金額もパーティー券購入者数も、前の年の訂正前の数字とほぼ同じ規模でした。
【麻生派】
かつての主要5派閥で唯一派閥存続を決めている麻生派「志公会」は、5月に1回政治資金パーティーを開催し、2億5157万円余りの収入があったと記載しています。購入者数は8967人で、前の年の訂正前より収入は7%、人数は8%増えていました。
秘書「リスクゼロの楽な収入源だった」
政治資金パーティーは、政治団体が開き、参加者から受け取る収入から経費を差し引いた残りが団体の政治資金となる催しです。
派閥の政治資金パーティーに関わってきた自民党の現職国会議員の秘書は、NHKの取材に、「問題になるまでは、多くの派閥が、当選回数などに応じてパーティー券の販売ノルマを設定し、ノルマを超えた分を払い戻してくれるというシステムでやっていた。所属議員側からすれば、パーティー券販売という手間はかかるけど、払い戻し分は経費ゼロで戻って来る資金なので、楽な収入源の1つだったが、自分で開催すると経費倒れになるリスクがある」と話していました。
購入団体「広く浅くからより深くに」
派閥のパーティー券は、購入する側にとってどのようなメリットがあり、派閥解消は何をもたらすのか。
自民党の複数の主要派閥のパーティー券を10年以上前から購入してきた団体の関係者がNHKの取材に応じ、「パーティー券購入の年間予算は100万円ほどで、1回少なくとも10万円、多いときには40万円くらい購入していた。会員から集めた重要なお金をいかに効率的に使うかというのが大事で、議員個人のパーティー券のほかに派閥のパーティー券も買って大変だったが、何かあった時の保険として大物議員がいる派閥の方が効果的だと思いおつきあいとして買ってきた」と話しました。
そのうえで、今後の方針について、「団体活動にとって政治活動は切っても切り離せない重要なもので、政治力が必要なので、パーティー券は今後もずっと買っていく。これまで議員とのつきあいは広く浅くでやってきたが、派閥がなくなるので、これからはその分おつきあいをする先生を絞ってより深くおつきあいしていく。たくさんパーティー券を買えば、つきあいも深くなり、団体の事情も理解してくれるので、お互いそのほうがいい」と話していました。
旧岸田派 “0円解散”報告書に不整合か
このうち、旧岸田派「宏池政策研究会」は、29日公開された去年分の政治資金収支報告書で寄付の支出の不記載があったことがNHKの取材でわかりました。
自民党の候補者の政治団体の収支報告書に、去年6月に派閥の政治団体から50万円の寄付を受けたと書かれていましたが、派閥側には支出の記載がありませんでした。
前の年からの繰越額が変わり、解散時の収支報告書も整合性がとれなくなる可能性があります。
宏池政策研究会の元事務局は、NHKの取材に対し、「すでに解散しているため手元に資料がなく、改めて当時の担当者などに確認し、事実関係がわかり次第、総務省などとも相談し、適正に対応する」とコメントしています。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。