宮城県の東北電力女川原発(10月)=共同

東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)で重大事故が発生した場合の避難計画に実効性がないとして、地元住民が運転差し止めを求めた訴訟の控訴審判決が27日、仙台高裁であった。倉沢守春裁判長は一審・仙台地裁判決に続き、運転差し止めを認めず、住民側の控訴を棄却した。

2号機は11月に約14年ぶりに発送電を始めたばかりだった。12月中の営業運転の再開を目指している。

原告は女川原発の半径30キロ圏内に住む石巻市民16人。宮城県や石巻市が策定し、国の原子力防災会議で了承された避難計画に実効性があるかが最大の争点だった。

避難計画は女川原発の周辺7市町に住む約20万人を対象とし、半径30キロ圏の境界近くに設けるスクリーニング検査場で放射線量を測った後、圏外の避難所へ移動することを想定している。

住民側は一審に続き、現在の避難計画では避難指示が出た場合に検査場へ向かう道で渋滞が起き、想定通り半径30キロ圏外に避難するのは困難と訴えた。不備のある計画に従うことで生命・身体に深刻な被害を受ける可能性があるとして運転差し止めを求めた。

東北電側は具体的な事故の危険性を立証できない限り、差し止めは認められないと強調。避難計画は段階的に避難することを想定しており、渋滞は生じないとしていた。

2023年5月の一審・仙台地裁判決は「原告側は事故が起きる具体的危険を立証していない。仮に避難計画に不備があっても、直ちに具体的危険が生じるとはいえない」と指摘し、避難計画の具体的な中身を検討することなく原告側の請求を退けていた。原告側が判決を不服として控訴していた。

女川原発は2011年3月の東日本大震災で被災し、当時定期検査中だった2号機を含む3基の運転が停止した。2号機は20年2月に原子力規制委員会の安全審査に合格。24年10月に再稼働し、11月には約14年ぶりに発送電を始めた。12月中の営業運転の再開を予定している。

2号機は事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉(BWR)で、東日本大震災後のBWRの再稼働は全国初だった。周辺自治体の避難計画は20年6月に国の原子力防災会議で了承されていた。

東日本大震災後、原発の運転を認めない判決はこれまで地裁段階では4件ある。このうち日本原子力発電の東海第2原発(茨城県東海村)を巡る21年3月の水戸地裁判決は同じく避難計画の不備を理由に運転を認めなかった。

いずれも電力会社側が控訴し、1件は控訴審で電力会社側が逆転勝訴し、残る3件は現在も審理が続いている。

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