1966年に静岡県で一家4人が殺害された事件で袴田巌さん(88)の再審無罪が確定したことを受け、静岡地検の山田英夫検事正が27日、浜松市の袴田さん宅を訪れ、「相当な長期間、法的地位が不安定な状況となり、言葉にできないようなつらいお心持ちで日々を過ごされたことについて大変申し訳なく思っている」と謝罪した。
山田検事正は、再審無罪判決を「承服できない」とした検事総長談話について、「今回の無罪判決を受け入れ控訴しないと決めた以上、犯人が袴田さんであるというようなことは申し上げるつもりはないし、犯人視することもない」と説明。「大変申し訳ございませんでした」と重ねてわびた。
同席した袴田さんの姉ひで子さん(91)は「いまさら検察にどうこう言うつもりは毛頭ございません。無罪が確定して今は大変喜んでおります」と応じた。
9月26日の再審判決で静岡地裁は、袴田さんの「自白」や犯行着衣とされた血痕付き衣類などの証拠について、「捜査機関による捏造(ねつぞう)」と認定した。
畝本直美検事総長は控訴断念を表明した談話で「袴田さんが相当長期間、法的地位が不安定な状況に置かれてしまい、申し訳なく思っている」などと謝罪する一方、判決について「到底承服できず、上級審の判断を仰ぐべき内容だ」と指摘。弁護団が「袴田さんを犯人視しており、名誉毀損(きそん)にもなりかねない」などと批判していた。
袴田さんは80年に死刑が確定。静岡地裁の再審無罪判決は今年10月、静岡地検が上訴権を放棄し、確定した。
袴田さんに対しては、静岡県警の津田隆好本部長も10月、直接謝罪している。
再審無罪判決確定を受け、袴田巌さん(右中央)に謝罪する静岡地検の山田英夫検事正(左)=27日午前、浜松市(代表撮影)
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