2018年12月、千葉県柏市立柏高校の2年生男子生徒が自殺したのは、過度に長時間の部活動が原因だったとして、遺族が2日、活動時間や休養日の基準を定めた国の「部活動ガイドライン」の順守などを柏市や全国の自治体に指導するよう、文部科学省に申し入れた。(榎本哲也)

◆「子どもの熱量をコントロールするのは大人の務め」

 「好きでやっている部活動と思うかもしれないが、その熱量をコントロールするのは大人の務め。今いる子どもたちが、私の子と同じように苦しむことがあってはならない」。申し入れ後に記者会見した生徒の父親は、声を詰まらせながら訴えた。

長時間の部活を防ぐ国指針の順守徹底を求める申入書を文化庁の担当者(右)に申入書を手渡す、遺族代理人の児玉勇二弁護士

 生徒は当時、全国屈指の強豪である吹奏楽部に所属していた。  柏市の第三者委員会は22年3月、部活動の長時間練習が自殺の背景にあるとする報告書をまとめた。それによると、当時の吹奏楽部の練習時間は平日約5時間半、休日約11時間。休養日は月平均1.5日だった。

◆市は方針を改めたが国のガイドラインをなお超過

 国の部活動ガイドラインは、活動時間は長くても平日2時間程度、休日3時間程度で、週2日以上の休養日を設ける…としている。  報告書を受けて柏市は昨年4月、部活動方針を改め、「適切な活動時間」を定めた。しかし、平日は3時間以内、休日6時間以内、休養日は平日週1日以上・週末月2日以上との内容で、ガイドラインより活動時間は長く休みは少ない。

文部科学省への申し入れ後に記者会見する、自殺した生徒の父親=2日、東京・霞が関の文科省で

 遺族側は、これを問題視して話し合いを求めたが、市が応じないことから国に申し入れをしたという。  申し入れ書では、柏市に対し、遺族への謝罪や協議再開をするよう指導することも文科省に求めている。

◆「申し入れを把握していないのでコメントできない」

 遺族代理人弁護士によると、対応した文化庁の圓入由美参事官は「さまざまな機会を通じて、部活動ガイドラインの浸透を図っていく」と話したという。柏市教委教職員課は取材に対し「申し入れ書の内容を把握していないのでコメントできない」としている。 

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