◆ゼロ戦製造工場の近くに住んでいたために
「80年たっても空襲の恐ろしさは忘れられない」
本堂の脇にある平和観音菩薩の像。寺を訪れた小中学生には像の前で戦争体験を語る
中里さんは、本堂の脇にある平和観音菩薩（ぼさつ）の像を見上げてつぶやいた。当時、国民学校2年生。学校から帰宅途中にB29の東京初空襲に遭遇し、その後の空襲で地域の人たちが亡くなるところも目にした。 1944年11月24日昼ごろ、警戒警報の発令を受けて、姉や友人ら5、6人で集団下校し、武蔵境駅近くの学校から約2キロ先の自宅を目指した。1キロほど歩いたところで「ガラ、ガラ、ヒュー」という異様な音を耳にした。直後に「バーン、バーン」と大きな音が響き、振り向いた先に白い土煙が見えた。「こっち、こっち、早くおいで」。農家の女性の声を頼りに生け垣をくぐり、防空壕（ごう）に避難した。◆墓石は200m先の民家の屋根を突き破り
自宅に戻ると、隣の関前八幡神社の惨状が目に飛び込んできた。御影石の門柱2本とサワラの大木が根元から折れていた。爆弾の威力を知り、体が震えた。 その後も工場への空襲は続き、12月に2回、1945年1月と2月に各1回、4月に3回、8月に1回の計9回に上った。工場をそれた爆弾は、周辺住民の命も奪った。
地域の人から寄せられた戦時中の資料を手にする中里崇亮住職
「ああ、もうだめだ」。4月7日の7回目の空襲のとき、近所の男性を助けようとした父・亮融（りょうゆう）さんの言葉が今も耳から離れない。爆弾は民家や延命寺...残り 771/1542 文字
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