公立学校の教員が不足し、長時間労働が課題となる中、文部科学省は「給特法」という法律に基づき残業代の代わりに月給の4%を一律に上乗せしている給与について、来年度の予算編成に向けて上乗せ分を一度に13%引き上げる方針を示しています。
こうした中、財務大臣の諮問機関、財政制度等審議会の11日の会合で、財務省は、上乗せ分は10%を目指して段階的に引き上げる案を示しました。
引き上げにあたっては、外部対応や事務作業、それに部活動といった授業以外の時間を減らすなど働き方改革の進ちょくを確認したうえで引き上げの決定を行う仕組みの導入を求めています。
これに対して、委員の間からは、
▽給与増には賛成だが一律の引き上げはやめるべきといった意見や
▽勤務時間だけでなくアウトプットも一定程度評価すべきだといった意見が出されました。
土居丈朗部会長代理は「財務省の案については大半の委員から賛同が得られた。今の仕組みではできないが、いずれは実際に残業した時間に対応する給与に変えていく必要があるという意見があった」と述べました。
教員の処遇の改善をめぐって財務省と文部科学省との間で意見の隔たりがある形で、今後、議論が本格化する見通しです。
財務省 働き方改革推進求める
財務省は、国や民間の調査の結果などから、教員の不満は給与面よりも仕事と生活のバランスにあると指摘しています。
このため一定の期間を設けて教員が担うべき学校業務を抜本的に見直すことが求められるとして、職場の魅力向上を進め、労働基準法の原則通り、やむを得ない所定外の勤務には相応の手当てを支給することが必要だとしています。
上乗せ分をめぐっては、財務省は10%を目指して段階的に引き上げる案を示す一方、文部科学省は4%から13%に一度に引き上げる方針を示しています。
財務省は、引き上げにあたっては、
▽外部対応や事務作業、それに部活動といった授業以外の時間を減らすことや
▽勤務時間の管理の徹底、
▽デジタル化の加速、
▽長期休暇を取得できる環境整備など働き方改革の進ちょくを毎年、財務省と文部科学省が確認したうえで、引き上げの決定を行う仕組みの導入を求めています。
そのうえで、仮に働き方改革が進まない場合には、その原因を検証し、外部人材の配置など、その他のより有効な手段に財源を振り向けるとしています。
さらに将来的には、所定外勤務に見合う手当など勤務時間や業務負担に応じたメリハリのある給与体系の検討が必要だとしています。
財務省によりますと給与の上乗せ分を一度に13%に引き上げる場合、国と地方あわせて5600億円の財政支出が生じるとしていて、その財源についてもあわせて考える必要があるとしています。
専門家「『信賞必罰』のやり方 学校現場になじまない」
教員の処遇の改善をめぐる財務省の案について教員の働き方改革に詳しい東京大学の小川正人名誉教授は「時間外勤務の目標値に達しなければ給与を改善しないという『信賞必罰』のようなやり方は学校現場になじまない。まずは、今の状況にあわせた形で給与の上乗せ分を引き上げる必要などがある」と話しています。
小川名誉教授は、時間外勤務を減らすことは重要だとして定期的に実態を検証すべきだとした上で「授業のICTの活用によって準備に時間がかかるほか、不登校やいじめ、特別支援教育など山積し、それに対応するための業務が増えている。授業以外の業務をほかのスタッフや地域に移管するための国による財源の措置が必要だ」と指摘しています。
さらに「教員が労働時間の削減目標を達成するために本来やるべき授業や学校活動を縮減することでつじつまを合わせることも生じうる。その場合に一番に影響が及ぶのは子どもたちだ」と話しています。
一方、財務省の案で、将来的には時間外勤務に見合う手当の制度への移行が言及されていることについては、時間外勤務の抑制につながるメリットがあるとした上で「『給特法』の評価は分かれるところで、労務管理の体制を含め、議論していくべきだ」と話していました。
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